完璧美女の欠けてるパーツ
レトロな喫茶店は本当にレトロでBGMはジャズがかかり店内は薄暗く、スポーツ新聞を読みながらランチを食べるサラリーマンが多かった。
「すいません。こんな場所で」
「いえ、新鮮で楽しいです」
鈴木と向かい合って座り、注文してから5分で運ばれてきたランチはワンプレートで、今日は小さなオムライスとスープと野菜サラダの盛り合わせだ。想像以上に美味しくて驚いた。穴場だ。いつものおしゃれカフェより安くて美味しい。
「スマホは買い換えましたか?」
ラストのコーヒーを味わいながら梨乃は聞く。コーヒーも美味しい。
「時間がないので、とりあえずこのまま使ってます」
「踏みつけてごめんなさい」
「もう言わないで下さい。僕が悪いんです……あぁ、女性をランチに誘うならもう少しおしゃれな場所でした」
「そんな、美味しかったです」
「色々とトータルで……すいません」
「もう少し自信を持って下さい」
「持てません」
はっきり言い切られて梨乃は困る。
こんな男性は初めてだ。何て声をかけたらいいのか悩む梨乃を見て鈴木は慌てた。
「すいません。森田さんを困らせてしまいました。仕事ばかりしていると、こんな綺麗で素敵な女性とランチを一緒にする機会がなくて緊張しちゃって」
「綺麗で素敵じゃありません。私は不完全なダメ人間なんです」
ついポロリと本音を出してしまい。シマッタ!と思ったけれど、鈴木は心配そうに梨乃を見る。