完璧美女の欠けてるパーツ
「梨乃さんは、恋愛映画とか観ますか?観てムラムラする事ありますか?」
考えに考え抜いて大志は聞いてみる。
「ムラムラ?」
「気持ちがうずくというのか……うっとりするというのか」
「そうですね」
梨乃も負けずに考えに考え抜く。
そしてしばらくしてから「あまり恋愛映画は観ないので」と返事をすると大志はうつむく。
また幻滅させてしまった!
会話を繋げたくて梨乃は明るい声を出す。
「マーベル映画が好きで、アイアンマンが好きです。一番好きなのはマイティ・ソーだけど」
そう言うと大志の顔がパーッと明るくなった。
「僕も大好きです。インフィニティ・ウォーは映画館で3度見て号泣しました」
「私も観ました。スパイダーマンからの女性陣勢ぞろいの場面は鳥肌でした」
「そうそう。僕はキャプテン・アメリカが一番好きです」
「大志さんらしいですね」
そこから映画の話になってしまって、本題がズレているのを気付いた大志が咳払いなどして、急にスマホを動かし、梨乃に向かって差し出した。
「土曜日の夜。映画を観に行きましょう」
「映画ですか?嬉しいです。今、昔のリメイク作品でサスペンスのいいのが出てるはず」
「僕もそれは観たいのですが!それじゃありません!これです!!!」
R指定の官能恋愛映画。
人妻が年下の男と不倫をする話。
知らない映画だけど、口コミは美しい官能美やら芸術的エロスとか書いてある。
絶対観ないジャンルだろう。
「不倫して夫が殺されて逃避行するけれど、行く場所行く場所で悪い事が起きて、それは生きていた夫の仕業とか……の映画ですか?」
「僕もそっちの方がいいけれ。残念ながら、ただの恋愛映画です」
うわぁ嫌だなぁと思ったけれど
大志と一緒に映画を観る。
ただそれだけでなんだか楽しくてウキウキしてしまう。
「勉強の為、行きましょう。それで舌が絡まってるか確認して下さい。梨乃さんがネットで観たべろちゅーとは次元が違う美しさだと思います」
「はい」
梨乃は張りきって返事をした。