完璧美女の欠けてるパーツ
カジュアルなレストランに入って注文を終えた時、大志は梨乃にスノードームを渡してくれた。
ご丁寧に赤いリボンまで付いている。
「安いプレゼントですね」
「値段じゃありません。本当に嬉しいです、ありがとうございます」
心から礼を言って赤いリボンを指で撫でていると、大志の優しい目線が梨乃に注がれる。でも梨乃がふと大志を見ると、彼はまた目をそらす。
やっぱり
それが
少し寂しい。
グラスワインとパスタを頼み、ほんのりアルコールで頬を染めて話を弾ませる。
「普通にサスペンス映画を観ればよかった」
梨乃が言うと大志が笑う。
「それじゃ意味がないでしょう。勉強の為の映画ですから」
「そうでした。舌の絡みもはっきりわかりませんでした」
真面目に言ったのに、大志は咳払いをしてごまかした。
隣の席ではカップルがテーブル越しに手を繋いで見つめ合っている。ふたりの世界だ。愛し合っているのだろう……。
じっと見てると「今日は相手が僕ですいません。でも必ずハイスペックな素敵な人が梨乃さんに現れますから」と大志に言われてしまった。
前は嬉しかったけど
今はその言葉がむなしく感じるのはどうしてだろう。
「大志さん?」
「はい」
「大志さんの元カノって、どんな方でした?」
「普通の可愛らしい女性でしたよ」
「……うらやましいです」消えるような声で梨乃は言う。
「でも僕の仕事が忙しくて、すれ違ってる間に彼女は好きな人ができて、いつもフラれてしまうパターンです」優しく笑って大志は言う。