完璧美女の欠けてるパーツ

「やっぱり『男性経験がない』って話は、黙っていた方がいいですよね。最初に言って引かれるのが一番怖いから」

「うーん。僕はそんなにこだわらないので、『初めてです』って言われたら大切にしようって思うから、嬉しいですよ」

「アラサーですよ私」

「年齢は関係ないでしょう。人と人との繋がりなんだから」

「武田鉄矢みたい」

「今日はやけに突っかかりますね」

「すいません」
ちょっと不機嫌な大志の顔を見上げて(こんな顔も可愛いな)と梨乃は思いながら少し反省をする。たしかに今夜は自分の気持ちが不安定で、大志に嫌な思いをさせている。

「あとは大丈夫だと思います、相手の動きに合わせて自分も動けばいいんですよね。海外ドラマで見ました」

「そんなドラマありましたか?」

「けっこう真面目な歴史ドラマです。田舎の貴族の娘が政略結婚で父親より年上の男に嫁ぐことになって、その前に最初は好きな男と経験したくて、屋敷の馬番として働く男性に経験させてもらうって内容で、相手の動きに合わせると最初は痛いけど最後は慣れて気持ちがよくな……」

「もういいです!!わかりました!!」

「正解ですか?」

「正解だけど、きっとその貴族の娘は馬番が好きで、愛があったから気持ちよく……いや、無事に終わったはずですよ。梨乃さんも愛がないとダメです」

「大志さん」

「何でしょう?」

「大志さんって乙女ですよね」

「えっ?」

「何でもないです。ほら、最後だから飲みましょう」
梨乃は吹っ切れたように明るい声を出して、不思議そうな顔をする大志を見つめていた。


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