完璧美女の欠けてるパーツ



クリスマスまであと少し。
カウントダウンが始まって、ビル全体が浮足立ってる雰囲気だ。

梨乃はハイスペック弁護士の高崎健人とデートを重ね、楽しく過ごしていた……と、自分で言い聞かせている。
ゴージャスな食事とドライブデートとクルージングと優雅な会話。高崎はさすが弁護士の話上手の聞き上手で、女性を退屈させない紳士だった。
理想的な男性なんだけど
梨乃は彼と別れた後、めちゃくちゃ身体が強張って整体に行きたくなってしまう毎日だった。

とりあえず
このままいけばヤレる。
初心忘れるべからず。雑念を捨てて梨乃はもうそれだけ考える。
もう大志はいない
大志には会えない
突発的にキスしたのもいい想い出になるだろう。

強くなろうと梨乃は思う。

大志は大志で毎日が仕事で忙しく……忙しく自分を追い込み仕事に逃げていた。
気を抜くと思い出すのは、柔らかな梨乃の唇と悲しそうな顔の「さよなら」で、胸がしめつけられてしまうという乙女ぶりだったから。

仕事仕事仕事!
大志は事務所でひとりクリスマスムードを無視して、夜遅くまで事務仕事と顧客巡りなどして過ごしていた。

そんな
ある夜のことだった……。
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