完璧美女の欠けてるパーツ

部屋は広く開放的で物は少なく、シンプルで住み心地よさそうだ。梨乃の後ろには革張りの白いソファがあり、ブランケットがかけてある。テーブルには保冷剤が2、3個あり、痛い場所を冷やして横になっていたのがわかる。

「事務所の人に話を聞いて驚きました」

「すいません」

「私が原因なんですか?」

「えーっと……」

「顔をそらさないで、こっちを見て下さい」
梨乃はそう言いながら、こっちを見た大志の顔が痛々しくて胸が苦しくなった。

「私が原因なんですね」

「でも実行したのは僕なので」

「原因を教えて下さい」
梨乃の真剣な顔に大志はため息をして覚悟を決める。

「彼は本命がいるんです。代議士のお嬢さんと見合い話があって、梨乃さんとは遊びです。とりあえず抱いてみる愛人枠です」

「それを知って殴りに行ったんですか?」

「当たり前でしょう」

「遊びでいいんです。とりあえず抱くなんて最高でしょう。それこそ願ったり叶ったりで、どうしてそこで邪魔するんですか!」

「だから、それは違うんです!」

「違うのは大志さんでしょう」

「僕は梨乃さんの幸せを」

「大志さんが殴られて幸せになれるわけない」

「それは僕が……」

梨乃は大志の胸の中に飛び込んだ。
大志はそのままフロアに倒れ込み、梨乃を抱きしめた形でふたり横になる。
< 68 / 80 >

この作品をシェア

pagetop