完璧美女の欠けてるパーツ
シャツの奥から大志の鼓動が聞こえる。規則正しいその音が愛しくて梨乃は目を閉じて耳を傾ける。思いのほか広く温かい大志の胸の中で、顔も見たことがない実の父親に抱かれている気持ちになってしまう。大志の胸の中はどうしてこんなに安心できるのだろう。ずっとこのまま時間が止まればいいのにと思う梨乃だった。
「梨乃さんが好きです」
大志の腕に力が入り、梨乃は自分の耳を彼の胸元に重ねて彼の胸から音を聴く。貝殻に耳を澄ませるように彼の声の振動で告白を胸から聴く。
「僕は自分に自信がありません。ハイスペックじゃないし、会話もおもしろくないし、どこか残念枠だし」
「私だって同じです。ごくごく普通のアラサーです」
「梨乃さんは綺麗で仕事ができて……可愛い」
「大志さんは誠実で真面目で優しい」
やっとふたりは目を合わせ
梨乃は大志のメガネを外してラグに置き、痛々しい顔を指でなぞる。
「痛かった?」
「今が幸せで痛みが飛んでった」
そっと唇が重なる。
大志からのキスは優しい。
「大志さんとなら【べろちゅー】もできそう」
梨乃が笑ってそう言うと、大志は恥ずかしそうに笑って「それは段階を追ってから」そう言ってまたキスをする。柔らかいキスが重なってからそっと唇を割り大志の舌が梨乃の舌を探る。
初めての経験に梨乃は自分で嫌がるかと思ったら、自然に受け止めた。
あぁ本当だ
基本は愛なんだ
愛って大切と梨乃は理解する。