完璧美女の欠けてるパーツ

「えーっと……一泊です」
あれこれとまた物を追加すると、用意していた小さなトランクでは入らなくなり、大きなトランクを転がすはめになった梨乃である。

「何泊でも歓迎です。寒かったでしょう、どうぞ」
穏やかな優しい笑顔に冬の寒さが負けてしまうようだ。梨乃は「おじゃまします」とほっこり笑顔で部屋に入ると、もうテーブルの上にクリスマスのごちそうが用意されており、部屋には小さなツリーまで飾られてあった。

「わぁクリスマスだ」
子供のように目をキラキラさせる梨乃を見て、大志は心の中で何度も『かわいい』と繰り返す。
恋愛なんて初めてじゃないのに、浮かれる自分が恥ずかしくて笑える大志だった。

「料理も自分で作ったんですか?」

「もちろん」

「ドヤ顔ですね」

「でしょう自信あります」

「美味しいワインで乾杯ですね」

ネットで調べたクリスマスレシピを見て作った大志の料理は完璧で、ふたりはワイングラスを傾けながら楽しい会話を弾ませた。
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