甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「どれも素敵ですし、夏乃ちゃんに似合うと思います。この、20代後半のイメージのドレスがピッタリなんじゃないかと思うんですが」
俺の言葉にそのえさんと彩美さんも顔を合わせて微笑みあっている。
「そうなの、このドレスを着せてお嫁に出してあげたくて。ダメかしら?」
そのえさんが聞いてきたのは、一ヶ月後にオーダーメイドのドレスサロンに行く予定を考えての事だろう。
「こんなに彼女を思う人がデザインしたものがあるのに他所に頼む必要を感じません。鈴原さん、お手数お掛けしますがこのドレスを夏乃ちゃんのサイズに仕立てて頂けますか?」
俺が笑顔で二人に言うと、ホッとしたように微笑んでくれた頷いてくれた。
「もちろんよ! ありがとう。このドレスを着せてお嫁に出してあげるのって、春香は中学生の夏乃ちゃんを見てこれを考えていたのよ」
彩美さんの言葉に、胸にくっと来るものがある。
「ぜひ、コレをお願いします」
俺は深く頭を下げて、夏乃ちゃんのお母さんの思いを受け取るべくお願いする事にしたのだった。
そんな秘密の三者会談から一ヶ月後。
式まであと三ヶ月。
今日はドレスを見に行くという名目で夏乃と一緒にアヤミウェディングドレスサロンに向かっていた。
夏乃はドレスはすっかりレンタルするものだと思っているようだから、サロンに着いたら見た事あるデザインが形になってるのに驚くだろう。
彼女の反応を楽しみにお店の扉を開く。
エスコートして彼女を招き入れてすぐ、夏乃は目の前にあるドレスにくぎ付けになり、瞳を潤ませて見つめている。
「潤也さん、これは……」
今にも瞳から零れそうな涙を溜めて見上げてくる夏乃は、嬉しさと驚きとたくさんの感情で溢れてまとめられなくなっている感じだ。
「夏乃ちゃん、久しぶりね。綺麗になってておばさん驚きだわ」
そう笑いながら出迎えてくれた彩美さんに、夏乃はこの事態のアレコレに思い至ったらしい。