甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「彩美おばさん! お久しぶりです。まさか、このドレスを用意してくれるなんて……」
感極まったのか、とうとう瞳のふちで耐えていた涙が決壊してポロポロと零れつつも夏乃は微笑んでいる。
「お式が決まった時に、このドレスが頭には浮かんでいたの。でも、もうお母さんは居ないから形にはならないだろうと思ってた……」
ドレスに近付いて、それをじっくり見たあと夏乃は俺を振り返り微笑む。
「このドレスはお祖母ちゃんと彩美さん、そさてそれを良しとしてくれた潤也さんのおかげでここにあるのね。すごく嬉しい……。ありがとう潤也さん」
純白というよりは、あえて漂白の薄い柔らかな色合いの白絹のドレスは夏乃の控えめな雰囲気にとても似合っていた。
採寸合わせに試着した姿はまさに、夏乃のためだけのドレスであることがよく分かった。
試着だけでこの感じなら、しっかりティアラやネックレスを付けてベールも被った姿になったらさぞ美しいだろうと、三ヶ月先の式が楽しみになった。
「つくづく身内だけのお式にしてて良かった……。他の男にこの綺麗な夏乃は見せたくないからね」
試着から着替える前の夏乃にそう囁くと、首まで真っ赤にした彼女がグッと顔を上げて言う。
「それなら、このドレスの隣は黒じゃなくて光沢のあるグレーのフロックコートですからね? 潤也さん五割増なりますもん、私も身内だけでよかったです」
そう返す彼女の可愛さに思う存分にやられる。
彼女も最近は俺のストレートさに影響されたか、だいぶ気持ちを表してくれるようなって、俺は毎回矢で射抜かれている気分だ。
幸せ絶好調でウザイ? いいだろう? だって今の俺たちは彼女の作るデザートよりも甘い蜜月期間なのだから。
潤也side fin


