煙草未満。―唇を塞ぎたくて―



多分、引っ込めようと思えば引っ込められるんだけど。

なにも、できない。なにもしたくない。

くちもとに寄せられ、目と目が合う。絡む。

瞳の奥の奥の方で、まじわってしまったみたいだ。



手のひらを舐められ、じくじくとした熱が、当たる。



「〜っ!?」

声にならない、悲鳴。

「な、なっ、ななな!なんで舐め……!」

「イタズラだから?」

おかしいよ。



「私がイタズラする側でしょ……!?」

「こどもの頃、トリックオアトリートはお菓子もらうかイタズラしてもらうかだと思ってたんだよね」

ぼーっとしたような声が、脳に響く。



「お菓子はもらうものなんだから、イタズラももらうものだと思って」

「……なんで、こどもの頃のことを……!」


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