浮気男のシンデレラ

百本の薔薇




ガクッ!
部長が出て行ったあと、膝から
崩れ落ちた。

大仏部長の待ち受けに映る陽和は
ダックスフンドを抱いて柔らかな
笑顔をみせていた。

そうだ、大仏なんて苗字そうそう
有るもんじゃない!

何で、気づかなかったんだ。
パーティ、俺が嘘ついて呼び出した
パーティに、パーティドレス迄買ったのか?俺の為に?

あ、ああそうだ赤い、可愛らしい
ドレスだった・・・な‼

慶一道は疲れた表情でソファに座り
両掌で、顔を覆いながら溜息をはいた。

目に映るのは、今にも泣きそうな
赤いドレスの陽和・・・。

あのまま帰ったのか?

寒かっただろうに‼
後悔してもし切れない。
わざとぶつけた肩も、痛かったろう。

陽和、陽和、陽和
ゴメン、ゴメン、ごめんな‼


二、三時間慶一道は座り込んで動かない。
テーブルの上のスマホに気づくと
鬼の形相で蒼太に電話をかけた。
それはもう怒りの塊の様な声だった。


《《💢💢おい‼陽和の誕生日は
矢張り今日だ‼なんであんな嘘
ついた‼💢
お前のせいで陽和は最悪な
誕生日を迎えたんだぞ💢💢。》》
《《もう取り返しがつかない‼💢💢
どうしてくれる💢
お前との友情も、💢
‼‼これまでだ 》》

「まて、落ち着け‼
お前、騙されてるぞ‼気づけ馬鹿か💢」

《《五月蝿い‼黙れ💢💢
そんなに陽和と
別れさせたかったのかよ💢
何故だ?なんでだよ‼💢》》
《《ガツンー‼》》

Puーpuーpuー

慶一道は壁にスマホを投げた!
やり場の無い怒りは慶一道を自分を
責めていた。

蒼太に対しての怒りは口だけだ。
「俺は、陽和への当て付けの為に
ジオンと・・・寝た。」

浮気?
いや、完全なる・・・、裏切りだ‼






慶一道のあまりの剣幕に驚いた蒼太は、確認の為に鷹斗に電話した。
出ないから又嫁にビビってると思い
LINEした。

「おい、鷹斗、陽和の誕生日は
23日だったな、慶一道の怒りが
半端無いんだ。佳代さんに
確かめてくれ。」


「え‼又かよ。
お前らの電話、佳代の奴不機嫌に
なるんだよ。

やだよ。」


「鷹斗、たのむよ。」


「>﹏<。わ、分かった。」

「か﹏よ。」
白菜を、まるごと買って来た佳代は
菜切り包丁で4っにカットしていた。

佳代から少し離れてビクビク

「陽和ちゃんの誕生日って23日
だったっけ?」

腰の抜ける様な声で、恐る恐る聞いてみる。

グッワッサーグワッサーと音を
立てていた音が止まる。

(✧"✧)ギラリと睨む包丁とデカい目を
半分に剥いた佳代が振り返る。

「なに?又合コンに出かけるの?」

ゴクッ
「め、め、め、めっそっそそそ💦
も無い無い「デス」」

「ふううん、この間から怪しく
ない?」

佳代は腕を組み近ずいてくる。


「なになに怪しんでるの!
今は呼び出されたら直ぐにいくだ
ろ、佳代俺を、アッシーくんに
してる癖に怪しむのかよ。

俺だって送迎させられるんだろ‼
都合が有るし日にち、分かった方
がいいんだよ。」よ💦」


「そうね。ゴメン、ゴメン」

佳代はフツと笑うと、明るい顔をした。
ε-(´∀`;)ホッと鷹斗も気がゆるむ。

「陽和の誕生日は今日だけど
妹の陽菜ちゃんの誕生日が23日
23日の夜は、たまたま何年かぶりに
皆都合が会うから
おいでって呼ばれたのよ。」


「じゃあ、陽和ちゃんの誕生日は、
今日なの?」

「うん、そそ」


「えーっ‼そそ・・・って‼」

・・・23日は妹のた、た、誕生日
って事?

“そーなんですね“‪ ´⊙⊙`
マジ‼
鷹斗は意味無い独り言を呟く。

窓の外は、しんしんと、雪が降って
いる。

「24日に降る雪ならWHITEクリスマスなのにな。」

陽和の部屋はストーブが入っている。
シュンシュンと沸くヤカンのお湯が
外の寒さを写しだす。


ベッドの上でホットレモンを飲み
ながら陽和は呟く。

陽和の部屋に飾られている、シクラメンや、シャコバサボテン、ポインセチアの植物が、陽和の部屋を飾っている。

そんな花々の隣には小さな空の
花瓶がある。
昨日雑貨屋さんによって買った、
一本の薔薇用のピンクの花瓶。

この花瓶には、薔薇は・・・
咲か・・・無い。

陽和は、花瓶をジーッと見ながら
泣きそうになる。




夜もふけた頃
一台のセルシ〇が、陽和の家に横付けされていた。
車から1人の男性が降りて来て
オレンジに見える窓を見ながら一本の煙草をふかしていた。

しんしんと、降る雪はいつ止むの
だろう。

暫く彼は寒さを味合うかのように
じっと車に寄りかかっていた。

朝を迎えた玄関先には、厚く
包装された百本の色とりどりの
薔薇の花が置かれていた。

クルクルとした25本のリボン付き。
そこにはHappybirthday!!!陽和
と書いたメッセージカードが入って
いた。
薔薇の中には、細長い綺麗な箱が
入っている。

雪は、益々降り出した。
彼は又窓を見つめ静かに陽和を
想っていた。


白く吐く息も氷そうに寒い。

そんな寒さも胸の痛みで感じれ
なくなる。


車は陽和の起きる時間の5時迄
動かずにいた。

陽和の家の隅々に明かりが灯ると
静かに動いて走り去った。


それは陽和が一番会いたくて、
一番恋しくて絶対会いたくない
慶一道からの薔薇の花だった。


彼の香水、オードパルファ〇彼の
マンションに遊びに行ってた頃
香水を見つけた。

「ウッワァ、良い香り
この香り大好き。ˆ⌣ˆ」

と言った日から彼はこの香水を愛用
する様になった。

リボンの取っ手の近くから薔薇の香りが避けるように、オーガニックバジの香りと、柑橘系のシトラスの香り秘かに香ってくる。



雅楽代 慶一道の香り

彼を想いださせる
オードパルファ〇


「なんだ、今更‼」

熱の下がった陽和は元気になっていた。
抗生物質が聞いたんだな。

新聞を抱え家族にバレ無いように

薔薇を部屋に持ち帰りバケツに水
をはる。

月曜日、病院の待合室に飾ろう。


その後久しぶりにぐっすり昼過ぎ
迄眠っていた。
頭がスッキリして、心地よい目覚め
だった。

お試し期間でも彼と過ごしていた時又何処ぞの、おねーちゃんと
イチャコラしてるかも・・・とか、

お泊まりだったのかな?とか
色々頑張って百面相していた事が
殆ど。

然し昨日の様なあからさまに俺達は
ヤリました。

と公表する様な、お披露目キスを、
見たせいで、ショックと、確信が
飛んだせいか、もうケロリと
していた。

スパッと諦めた。意外な程
簡単に・・・その訳は・・・‼
本当に意外な事がおきたから。


ジオンと現れた時点で陽和の負けは
一目瞭然、
私の彼は違う人だっただけで、慶一道とは縁が無かっただけだ。



そう、それだけの話。



月曜日、タクシーに薔薇を抱いて
ご出勤。
先生に電話して百本の薔薇用の花瓶
を出してもらった。

警備員さんが二人で運んでくれた。

待合室に飾られた薔薇の花を見て
殆どの人が喜んだ。
沢山の人の笑顔が陽和の誕生日の
贈り物になったようで、残っていた
闇が浄化された気がした。

細長い箱のリボンは閉じたまま
陽和の机の引き出しに、しまってある。

陽和が彼に、会えて大丈夫になったら返そうと思う。
その時が何年先でも・・・。



「副社長、今日は娘達の誕生日です
ので、お先に帰らせて貰います。」

「あ、あの、あれだ
娘さん風邪はどう?」

アハハハハ「もうピンピンしてますよ。
彼氏の事も吹っ切れたみたいで
「 Σ(゚д゚;えっ‼」

ソロソロ婚活頑張るかぁー
なんて言ってますよ。もう25だし、」


「アハハハハ、アハアハ “まだ25“ でしょっ、
早過ぎるよ、僕は反対‼」



「いやいやいや、やっと娘が
その気になったんで、
お見合いさせますよ。」

「だ、《《ダメだよ💢💢》》反対‼」

「エッ‼どーしたんですか?」

「あ、あのあれだ‼
あれ、だから早いの‼」

「娘の事はいいんです。
副社長、あのモデルさんとの関係は?
副社長が射止めたと 雑誌、やテレビ
で報道されていましたけど、

まぁ、宣伝効果は、もうバッチリで
売上は約束された様なものですが、

御付き合いされて、いるのですか?」

大仏部長は白か、黒かを知りたかっんだろう。

直球で聞いてきた。


「いや、彼女とは何でもない‼
付き合っては、いない。



まぁ、色々はあった。
部長のご想像通りですよ。」

彼女に嘘は通らない。
昔からの付き合いだし、全て
分って、いるのだろう。

「では、帰ります。
娘達が待っていますので‼」

「あ、ああそうだね。
お、お疲れ様。」

大仏部長は、俺をじっ‼と見たあと
首をグネらせ帰って行った。



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