愛というもの~哀しみの中で~
見渡すけどどこにも恭吾はいなかった。
そこへ、廊下からリビングへ真さんが入ってきた。

「茉莉さん、起きたんだね。大丈夫?」

「きょぅ…」

声がかすれすぎてて出なかった。昨日叫ぶように泣いていたから…

「あぁ、恭吾は保育園に連れて行ったよ。昌に連絡したら由実さんが来てくれてね。一緒に連れて行ってきた。由実さんも心配してたよ。あっ、そうだ、職場も由実さんに聞いて連絡しておいたよ。しばらく休みをもらった。」

私はその場に座り込んだ。もう生きる気力もないのにどうやって恭吾を育てていいのか…。
私なんかが恭吾を育てていいのだろうか?
こんな母親から生まれた恭吾は幸せになれるんだろうか?
ひどく疲れていてその場から動けずまた目からは涙だけが流れ出ていた。

「昨日の話、女性にはショックな話だったよね。いきなりして申し訳ない。」

真さんは座りこんでいる私の横に来るとまた抱きしめる。
ダメだ、この人は絶対に。私はあの人から何も奪ってはいけない。
私は真さんを力なく押しのけようとするけど、真さんは離してくれなかった。

「実は今日は彼女と会う予定だったんだ。もし納得できないなら3人で話をしてみない?」

私は首を横に振る。
話し合う必要もない。真さんは私の所にいてはいけない。
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