愛というもの~哀しみの中で~
「あっ、でもね、焦ってする事でもないというか…セックスってすごいことするじゃない?ってどういうことするかは知ってるよね?」

「えっ?あぁ、はい。」

想像しようとすると、あの男の気持ち悪い息づかいと臭いと体を串刺しにされるような痛みが脳内に蘇ってきた…
怖くて、逃げたいのに押さえつけられた腕の感触…喉が締め付けられて声が出なかった…

「えっ?茉莉ちゃん大丈夫?汗がすごいよ?」

ついあの日に意識が飛んでしまって全身が寒く、汗が噴き出していた。
由実ちゃんは慌てて私の隣に来るとハンカチで顔を拭いてくれた。

「あっ、ごめんなさい…ちょっと嫌なこと思い出しちゃって…」

「えっ?嫌なことって……うん、大丈夫。私しかいないし今は大丈夫。嫌な思い出があるんだね…大丈夫。」

そう言って由実ちゃんは私を抱きしめてくれた。
人から抱きしめられる経験がほとんどなくて戸惑ったけど大吾も由実ちゃんも温かくて安心した。

「はぁ、もう大丈夫です。ありがとうございます。」

「ううん。茉莉ちゃん、セックスって好きじゃない人とはただただ気持ち悪い行為だけどお互い好きでたまらない相手とはすごく幸せな行為なんだよ。彼氏とは大丈夫だよ。きっと無理強いはしないだろうし、優しいんでしょ?」
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