天満つる明けの明星を君に②
敵対勢力の抵抗が止むことはない。

それほど人を主食とする妖が多いという証であり、朔は各地に散らばっている弟妹たちからの情報を得て、敵対勢力の位置や襲撃を決行する場所、日時などを正確に把握していた。


「今夜は数が多い。乱戦になるぞ」


「いいですね、天満の見せ場が増えます」


その天満は百鬼夜行の行列の前線に居た。

すぐ傍に吉祥も居たが、こちらは敵の多さに竦むばかりで役に立ちそうがなかった。


「雛ちゃん、君はじっとしていてね。怖かったら目を閉じていて。すぐに済むから」


「も、もうすでに怖いです…」


「どうってことないよ、この位の数なら」


…そうは言っても敵は百は居る。

天満の腕の中にすっぽり収まりつつ、怖いものの不安はなかった。

それに――

普通は頭自らが突っ込んでいくことはないと思っていたが、朔が先頭切って飛び出すと、百鬼たちがそれに追随して駆け出した。

猫又の頭に手を伸ばして撫でた天満は、最速で頼むよとお願いすると、行列から飛び出した。

元より疑っていなかったが…二刀流の天満はその分多くの敵を屠ることができる。

怖くて目を閉じていたものの斬り結ぶ音と敵の呻き声が聞こえるため、ただただ手綱を握り締めていた。


「雛ちゃん、これは毎夜行われていて、僕たちの家の使命でもあるんだ。君には知っていてほしくて連れて来たけど…やっぱり怖いよね」


少ししょげた声を出した天満が猫又を止めて一息つくと、辺りの喧噪は止んでいた。

ゆっくり目を開けた雛乃は、眼下に転がっている敵の屍を見て身体を強張らせたが、この光景は敢えて天満が自分に見せたもの。

その意味を自分は考えなければならないのだと悟った雛乃は、唇を噛み締めて手綱に手を添えている天満の手に手を重ねた。


「お怪我は…ありませんか?」


「うん、全然。雛ちゃんこそ返り血浴びてない?全部避けたつもりだけど」


「大丈夫です。…天様…また百鬼夜行に連れて行って下さい。今度こそちゃんと見ますから」


「いいの?…うん、分かった」


安堵したように息をついた天満の手は温かく、優しく、この男に安心できる場所を与えてやりたい、と思った。
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