天満つる明けの明星を君に②
暁が居なくなった――

だが気を辿れば何処にいるかは容易く分かるものの、本人の意思で隠れている可能性が高く、天満は雛乃に託して居間で待つことにした。


「暁様…どうなさいました?」


天満に指示された場所は――浴場だった。

暁がひとりで風呂に入るのは珍しいため、声をかけて覗き込むと――


「暁様…」


「雛ちゃん…」


涙声で訴えてきた暁は裸で、風呂場の隅でうずくまっている所を大きな手拭いで包み込んだ雛乃は、暁からとあることを告白されることとなる。


――その頃天満は暁に何が起きたのかと記憶を遡っていた。

大した病もなく、常に元気いっぱい。

食事もおかわりするほど十分食べて、最近はよく寝て悩みもなさそうだった。


「一体何が…」


「天様」


暁を伴って居間に入って来た雛乃の表情を見た天満は、そのはにかんだ笑みに首を傾げた。

そして雛乃の背中に隠れて顔を出さない暁を覗き込んだものの、顔を出さないためさらに首の角度を深めた。


「どう…したの?」


「暁様に月のものが」


「!あ、ああ…なるほど…それでお腹が痛かったんだね」


――半妖の成長は速く、月のものが訪れたのも特別早いわけではない。

妹たちの世話をしてきた天満にとっては別にどうということもなく、優しく微笑んで声をかけた。


「おめでとう。今日は赤飯だね。僕が炊いてあげようか」


「天ちゃんが…?私も一緒に作るっ」


「それじゃお祝いにならない気がするけど…まあいっか、一緒に作ろう」


これで暁も子を産める。

長い歴史の中ではじめての女の当主となる暁の未来は全く読めず、婿養子を取るしかないという結論に至っていた。


「腰を温めるとお腹の痛みが和らぐよ。後で温石で作ってあげるからね」


「うんっ」


ここまで暁を連れて来てくれた雛乃に目で合図して感謝を告げた。

ふたりは微笑み合い、娘のように思ってきた暁の成長を喜び合った。
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