天満つる明けの明星を君に②
暁にはじめての月のものが訪れた――

それはとてもめでたい報告だったのだが、父の朔は機嫌が悪くなった。

台所で一緒に赤飯を炊いている天満と暁を腕を組んでじっとり見つめていて、終いには暁から邪険にされた。


「父様、何もしないならあっちに行っててっ」


「…」


すごすごと居間に戻った朔は、朗報を聞きつけて駆けつけた晴明にくすりと笑われて、さらにへそを曲げた。


「お祖父様、何かおっしゃりたいようですが」


「いやなに、子の成長を喜ばぬ父とはどうしたことか、と思ってね」


「喜んでいます。喜んでいますけど……いずれ暁が婿を取ると思うと、この殺意を誰に向ければと思って」


「もうひとりの父の天満が喜んでいるのだよ、そなたも喜んでやらねば」


――暁はもちろん朔にも懐いているが、百鬼夜行に出て行かなければならない朔よりも、日頃傍に居る天満との方がより長い時を過ごしている。

天満が純粋に喜んでいるのだから、同じようにしてやりたいのだが――


「初の女子の当主だからねえ、鬼族の中でも傑出した血を持つ男でなければならぬ。そなた、あてがあるのかな?」


「…まだ捜してもいませんけど、婿養子でもいいと言う恋文ならすでに山ほど届いています」


「それを見ずに破り捨てていると雪男から聞いているよ。そろそろ暁を手放す心づもりをしないとねえ」


それでさらに口をへの字に曲げた朔の元に、次々と料理が運び込まれた。

その暁の表情があまりにも愛くるしく、朔は胸を押さえて呻いた。


「俺にはまだ心の準備ができそうにありません。暁が選んだ男だとしても、殺してしまうかもしれない」


「ははは、その時は皆で見定めてあげよう。そなたのお眼鏡にかなう男など居るのかな?」


「俺に勝てる男でないとやりませんよ」


「それは難題だねえ」


この時はそう息巻いたものの――朔も驚愕する大事件がいずれ起きることとなる。
< 125 / 213 >

この作品をシェア

pagetop