天満つる明けの明星を君に②
朔に呼び出された吉祥は、客間に集まる豪勢すぎる顔ぶれに息が詰まりそうになっていた。
この国で生きるからには逆らってはいけない男――朔を筆頭に、彼の兄弟、側近、そして夜叉の仮面を付けた暁の姿が在った。
朔は上座に座ったまま口を開かない。
無言で圧力をかけられた吉祥は、その重たい沈黙に耐えられなくなって急に捲し立て始めた。
「わ、私は雛乃を連れ帰るまではここを出ないと申し上げたはず!」
「…ここは俺の家で、誰を招くか、誰を滞在させるか、全て俺が決める」
朔は元々温厚ではあるが、不遇すぎる時を過ごしてきた弟にようやく訪れた幸せへの道を妨害する者に情けをかけるつもりは毛頭ない。
故にどうしてもそれが態度に出てしまい、朔のやや切れ長の目に宿る光は静かではあるが、拒絶に濡れていた。
「第一雛乃はもう俺の弟と契りを交わしている。うちとしては雛乃はもう家族の一員であり、これに手を出すつもりならば、それ相応の覚悟があるつもりだと解釈するが、どうだ」
「そ…それ相応とは?」
「鬼脚の者と鬼頭の者が女を巡って争いを起こし、嫌がる女を攫おうとしている、と噂が出回ったならば、どうなると思う」
――そんな噂が出回ったならば、この国を牛耳る鬼頭家を支持するこの国ほとんどの妖から目の敵にされてしまうだろう。
朔自身が直接手を出さなくとも、察した周囲が仲裁や牽制に入って手がつけられなくなる。
「わ、私を…私の家を脅すおつもりか…」
「脅していない。事実を告げているだけだ。天満、お前から何かあるか
「はい。吉祥さん、僕と決闘でもいいですよ。その代わり手加減はできないので、遺書を書いて下さい。僕があなたの家に届けますから安心して下さい」
…負けるつもりは毛頭ない。
遺書と聞いて背筋を泡立てる吉祥を皆が静かに見ていた。
天満が負けるはずはない。
だからこそ、誰も口出しはしなかった。
この国で生きるからには逆らってはいけない男――朔を筆頭に、彼の兄弟、側近、そして夜叉の仮面を付けた暁の姿が在った。
朔は上座に座ったまま口を開かない。
無言で圧力をかけられた吉祥は、その重たい沈黙に耐えられなくなって急に捲し立て始めた。
「わ、私は雛乃を連れ帰るまではここを出ないと申し上げたはず!」
「…ここは俺の家で、誰を招くか、誰を滞在させるか、全て俺が決める」
朔は元々温厚ではあるが、不遇すぎる時を過ごしてきた弟にようやく訪れた幸せへの道を妨害する者に情けをかけるつもりは毛頭ない。
故にどうしてもそれが態度に出てしまい、朔のやや切れ長の目に宿る光は静かではあるが、拒絶に濡れていた。
「第一雛乃はもう俺の弟と契りを交わしている。うちとしては雛乃はもう家族の一員であり、これに手を出すつもりならば、それ相応の覚悟があるつもりだと解釈するが、どうだ」
「そ…それ相応とは?」
「鬼脚の者と鬼頭の者が女を巡って争いを起こし、嫌がる女を攫おうとしている、と噂が出回ったならば、どうなると思う」
――そんな噂が出回ったならば、この国を牛耳る鬼頭家を支持するこの国ほとんどの妖から目の敵にされてしまうだろう。
朔自身が直接手を出さなくとも、察した周囲が仲裁や牽制に入って手がつけられなくなる。
「わ、私を…私の家を脅すおつもりか…」
「脅していない。事実を告げているだけだ。天満、お前から何かあるか
「はい。吉祥さん、僕と決闘でもいいですよ。その代わり手加減はできないので、遺書を書いて下さい。僕があなたの家に届けますから安心して下さい」
…負けるつもりは毛頭ない。
遺書と聞いて背筋を泡立てる吉祥を皆が静かに見ていた。
天満が負けるはずはない。
だからこそ、誰も口出しはしなかった。