天満つる明けの明星を君に②
「ねえ天ちゃん、私あの男の人嫌いだから、やっつけてね」


「うん、暁は雛ちゃんの傍に居るんだよ」


「分かった!」


その日の夕暮れ時――百鬼夜行前で庭に百鬼がひしめいた頃に、天満と吉祥の決闘は行われることとなった。

何の気負いもない天満の手には、何故かひと振りの揚羽が。

二刀流の天満がひと振りの刀しか持っていないのは珍しく、もうひと振りの妙法が盛んに野次を飛ばしていた。


『主よ、我も連れて行け』


「いや、すぐ済むことだし、揚羽だけでいいから。お前は黙って待っているんだ」


『我も我も!』


駄々をこねる妙法を完全無視した天満は、部屋から出て来て庭に下りてきた吉祥の青白い顔に妙な胸のざわめきを覚えた。


「天様が戦うお姿を間近で見れるなんて」


「女を巡る決闘らしいぞ、熱いな!」


非番の百鬼を含めると、その数およそ百――

庭が広いため数が居るようには見えないが、彼らは一騎当千の強者ばかりで血の気が多く、轟々と声を上げていた。


「天満、油断するな。何か様子がおかしい」


「闇落ち…でしょうか」


「いえ、その気配はまだ。ですが卑怯な手段に出るかもしれません。妙法も持っていた方がいいですよ」


「相手はひと振りしか持っていないんですから、僕がふた振り持つのは卑怯でしょう?大丈夫、油断はしません」


兄ふたりに窘められたものの、天満は小さく笑ってその場を離れて縁側に座って不安そうにしている雛乃に手を差し伸べた。


「雛ちゃん、これが済んだら話があるんだ。いい?」


「はい。天様、気を付けて下さい…」


「うん」


吉祥が手にしている刀は使いこまれたものではなかったが、どうにも嫌な予感がしていた。


短期決戦では済まないかもしれない――


気を引き締め、距離を取って吉祥と対峙した。
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