天満つる明けの明星を君に②
振りかぶるような上段の構えの吉祥に対し、天満は腰を低くして身体を斜めにすると、抜刀の構えを見せた。
一瞬で片が付く抜刀術であり、自ら向かって行くのではなく相手を待ち構えて素早く斬りつける技――
天満はそれも速く、その構えを見た朔は、この決闘を長引かせるつもりがないと踏んで立ったまま腕を組んで見ていた。
吉祥の構えはずぶの素人だ。
だが仄暗いあの目の光、無表情に近い不気味な引きつり笑い――覚えがある。
妖は時折‟闇落ち”という正気を失い、手足が捥げようとも臓物が千切れようとも暴れ狂って手がつけられなくなる現象がある。
その理由は大抵手に入らないものへの強い執着であり、恋着であり、吉祥はその前兆を見せていた。
「天満…」
傍で呟く輝夜の声色には、僅かながら緊張したものを含んでいた。
彼には何かしらの未来が見えていて、それを自ら決して口にすることはないけれど、見えているものが前日になろうとしているのではないか、と朔は悟った。
「輝夜、いざとなれば俺は止めに入るぞ」
「…私が動きます」
輝夜が身じろぎした時――吉祥が奇声を上げながら天満に向かって駆けた。
構えたまま動かない天満は、間合いに入る瞬間を狙っていて微動だにしない。
このまま懐に入れば間違いなく吉祥は斬られる――誰もがそう思っていた。
「!?」
天満の間合いの手前で突然立ち止まった吉祥は、振りかぶっていた刀を袈裟切りのようにして天満に向かって振った。
何かに濡れた、と思った時、天満は右目に激痛を感じて飛び退った。
「目に、何かが…!」
「ふ、ふふふふ!それは我が家に伝わる秘薬よ!目に入れば失明し、肌に触れれば皮膚が爛れる!さあ死ね!」
思いもよらぬ速さで駆け寄ってくる吉祥が見えたが、左目だけでは距離感が掴めず、それでも素早く刀身を抜いて構えた。
雛乃の悲鳴が聞こえていたけれど――そちらを見る余裕はなかった。
一瞬で片が付く抜刀術であり、自ら向かって行くのではなく相手を待ち構えて素早く斬りつける技――
天満はそれも速く、その構えを見た朔は、この決闘を長引かせるつもりがないと踏んで立ったまま腕を組んで見ていた。
吉祥の構えはずぶの素人だ。
だが仄暗いあの目の光、無表情に近い不気味な引きつり笑い――覚えがある。
妖は時折‟闇落ち”という正気を失い、手足が捥げようとも臓物が千切れようとも暴れ狂って手がつけられなくなる現象がある。
その理由は大抵手に入らないものへの強い執着であり、恋着であり、吉祥はその前兆を見せていた。
「天満…」
傍で呟く輝夜の声色には、僅かながら緊張したものを含んでいた。
彼には何かしらの未来が見えていて、それを自ら決して口にすることはないけれど、見えているものが前日になろうとしているのではないか、と朔は悟った。
「輝夜、いざとなれば俺は止めに入るぞ」
「…私が動きます」
輝夜が身じろぎした時――吉祥が奇声を上げながら天満に向かって駆けた。
構えたまま動かない天満は、間合いに入る瞬間を狙っていて微動だにしない。
このまま懐に入れば間違いなく吉祥は斬られる――誰もがそう思っていた。
「!?」
天満の間合いの手前で突然立ち止まった吉祥は、振りかぶっていた刀を袈裟切りのようにして天満に向かって振った。
何かに濡れた、と思った時、天満は右目に激痛を感じて飛び退った。
「目に、何かが…!」
「ふ、ふふふふ!それは我が家に伝わる秘薬よ!目に入れば失明し、肌に触れれば皮膚が爛れる!さあ死ね!」
思いもよらぬ速さで駆け寄ってくる吉祥が見えたが、左目だけでは距離感が掴めず、それでも素早く刀身を抜いて構えた。
雛乃の悲鳴が聞こえていたけれど――そちらを見る余裕はなかった。