天満つる明けの明星を君に②
天満は数日高熱に苦しんだ。

これはとても珍しいことで、皆がひっきりなしに天満の元を訪れては様子を見に来るため、雛乃はその応対や看病に追われて忙しい日々を過ごしていた。

だがそうしていたことで天満に告白されたことは頭の片隅に追いやられていて、どうしたら熱が下がるのか、滋養の良い食べ物は何なのか、調べものに追われていた。


「天満さん、まだ具合いが悪そうね」


「そうなんです…。晴明様のお薬が効いていてなおあの熱ですから、もう心配で…」


眠っている天満の元を訪れた芙蓉と雛菊は、目の下に隈ができている雛乃を気遣って甘い菓子と茶を持参していた。

長居するつもりは毛頭なかったが――


「雛乃さんも大変ね、好いた男に想いを隠し続けていられることは辛いわよね。しかも看病って…身体を拭いたりもするんでしょう?」


「あ、いえ、私はもう告白して……」


「えっ?」


初耳だった芙蓉と柚葉が目を見開くと、彼女たちに伝えていたつもりでいた雛乃も同じように声を上げて三人が見つめ合った。


「告白…したの!?」


「あ、その、はい…」


「で、返事は!?」


「あ、あの…」


ふたりの勢いに気圧されてまごまごする雛乃にぐいぐい迫り続けた芙蓉と柚葉は、雛乃が頬を赤らめた時点でぴんときていて、膝をついて立ち上がった。


「うまくいったのね!?」


「……はい…」


――芙蓉と柚葉が声にならない‟きゃー”という悲鳴を上げた。

ふたりがどういう運命にあるのか知っていて、どうやったらうまくいくのか――毎日のようにそれを話し合っていたふたりは、今生でも天満たちがうまくいったことに目を潤ませた。


「すごい…すごいわ!あの天満さんが…」


「あ、あの、主さまたちにはまだ内緒にしておいて下さい…天様の体調が良くなるまでは」


「もちろんよ、任せて!」


芙蓉と柚葉はその約束を守った。

だが――つい顔がにやけてにまにましてしまい、朔と輝夜にものすごく気味悪がられた。
< 141 / 213 >

この作品をシェア

pagetop