天満つる明けの明星を君に②
天満の熱がすっかり冷めた翌朝、うっすら目を開けると、雛乃が座ったまま目を閉じて少し眠っているように見えた。

高熱に苦しんでいた時の記憶がほとんどない天満は、ぼんやりしながらも雛乃がずっと看病してくれていたことを夢現に覚えていた。

起こさないようにそっと起き上がったが、少しの変化にも敏感になっていた雛乃はびくっと身体を揺らして起き、顔色の良い天満を見てふわっと笑った。


「天様…良かった、やっと起きれるようになったんですね」


「あれから何日経った?雛ちゃん、ずっと看病してくれてたんだよね、ありが…」


感謝を述べかけた時――突然雛乃の身体が傾いで布団に突っ伏した。

緊張の糸が切れたのと、恐らくずっと眠らずにいたのか、すうすうと寝息を立てて眠ってしまった雛乃のために床を敷いて寝かしつけた天満は、しばらくの間そのまま寝顔を見ていた。


「天満」


入り口から声をかけられて振り返ると、朔が安心した様子で笑いかけてきた。

続いて入って来た雪男も同じように安心している顔を見た天満は、首を傾げて腕を組んだ。


「なんか僕…もしかして大ごとになってました?」


「大ごとになっていた。熱を出してからずっと雛乃が…」


「ですよね。みんなに迷惑かけちゃったなあ」


「お祖父様が熱が冷めてもまだ身体の節々が痛むだろうからゆっくり静養した方がいいとおっしゃっていた。後で診てもらおう」


自分だけではなく、兄弟たちには心配性の者が多い。

ここで心配いらないと言っても無駄なことを知っている天満は素直に頷き、眠っている雛乃の頬を指で突いた。


「今度は僕が看病する番ですね」


昏々と眠り続ける雛乃が目覚めた時傍に居られるように――天満はそのままずっと雛乃の傍に居続けた。
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