天満つる明けの明星を君に②
天満たちには秘密裏に、輝夜を抜いた作戦会議が行われていた。

発起人は不要と柚葉であり、朔は作戦内容を知らないままふたりの前に座って腕を組み、首を傾げていた。

輝夜がこの会議に参加しなかったのは、彼には未来を見通す特別な能力があり、それ故この先天満たちの未来が彼の目に見えているかもしれない、だからこそ参加すべきではないと申し出てきたからだ。


「…というわけで。もう限界なのでごめんなさい」


「何が?」


「天満さんたちのことよ!あのふたり…もうできてるわ」


「芙蓉ちゃん、ちゃんと言葉選んで!できてるっていうか…天満さんが告白して、雛乃さんが応えたってとこまでだけど」


それを聞いた朔の顔にみるみる満面の笑みが広がると、脇に控えていた雪男と顔を見合わせて頷き合った。


「そうか、じゃあ祝言の準備でも進めておくか」


「待って下さい!私、天満さんに頼まれた物があって…それがようやくできたので渡したいんですけど、祝言にはぜひそれを使ってほしいなあって…」


「何を?」


「秘密です」


ふんぞり返ってどや顔をする柚葉の腕に抱き着いた芙蓉は、同じくどや顔で朔ににやりと笑いかけた。


「柚葉ったらそれを見つけるためにとっても苦労したのよ。悪いけど鬼頭家の情報網を網羅させてもらったわ。それでようやく見つけたんだから」


「それは構わないけど、一体なんなんだ?」


秘密、と繰り返す女ふたりの口を割らせるのは容易ではなく、仕方ないと肩を竦めた朔は、次の議題に移った。


「で、吉祥の処遇だが、奴の父が詫びに来るらしい。さっさと引き渡して終わりにさせよう。俺としては鬼脚家を潰しても構わないが」


「主さま、それは天満が嫌がっただろ。引き渡して金輪際目の前に現れるなと言ってやればいい。それにあいつ…」


目の昏さが濃くなっていた。

何か兆候がある――もしそれが現れたならば、殺す。

それは共通の認識で、けれど現れてほしくない兆候だった。
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