天満つる明けの明星を君に②
「な…な…っ、そんなことするんですか!?」


「そうなの、するの。最初は痛いし、なんでこんなことするのって思うかもしれないけれど、でも分かるわ。愛されてるって分かるから大丈夫」


芙蓉に力説されたものの、主に芙蓉が語った生々しい内容に雛乃は目が回りそうになり、柚葉に背中を支えてもらっていた。

天満があんなことや、そんなことを自分に――そう考えただけでぐらぐらして、思わず呻き声。


「私…私…無理です!無理!だって天様と目が合うだけでどうにかなりそうなのに!」


「分かる!分かるわ!私も未だに朔に見つめられるともうどうにでもよくなっちゃいそうになるもの。でもね、天満さんが見せている表情はあなたにしか見せないものなの。そして天満さんはあなたを抱きたいって思っているはず。だから心構えをしないといけないのよ、迎え入れるだめに」


「雛ちゃん、私もはじめての方は鬼灯様だったけど、最初は怖くて仕方なかったけど、でもいざとなると、なんで怖いなんて思ったんだろうってなるから。すごくふわふわするから」


ふたりに力説されても未だふたりが語った内容が飲み込めずにぐらぐらしていると――外からぽすぽすと襖を叩く音がした。


「雛ちゃーん!私も入れてえー!」


「暁様…!そ、そうだ、私暁様のお世話しなくちゃ!じゃあ、あの、失礼します!」


「待って!この石鹸絶対使うのよ!髪にはこれをつけて!頑張ってね!」


さらに手渡されたのはなんとも良い香りがする香油だった。

逃げるように襖を開けた雛乃は、きょとんとしている暁の手を引いて足早にその場を去った。


「無理…!無理だから…!」


「なにが?」


訊かれても、答えられなかった。
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