天満つる明けの明星を君に②
その頃天満もまた、朔に発破をかけられていた。


「…というわけで話は芙蓉らから聞いた。これでもう障害はなくなったわけだし、後はそうだな…抱くだけだな?」


「だ、抱くって…僕まだ本調子じゃないし…」


「ここで怖じ気づいてどうする。お前がそんな煮え切らない態度だと、雛乃に呆れられるぞ」


「いや、それは困ります。…そうしたいのは山々だけど…雛ちゃん、はじめてだろうし…僕、経験ないですよ。雛菊は夫持ちだったからそんな心配しなかったけど」


不安を訴える天満の手に盃を持たせた朔は、まず自らが呷って飲み、それを天満に促してにこっと笑った。


「お前が優しく導けばいい。吉祥の処遇は決まったし、輝夜も今の所問題ないと言っている。抱いて我が物にして、祝言を挙げる。何も躊躇することはない」


…部屋を共有し、ひとつの床で共に眠る日々の中で、そんなことは何度も考えたし、何度も手を出しそうになったことがある。

その度に男を怖がっている雛乃に万が一怖がられたらと考えて踏み出せずにいたが――朔の言う通り、もう障害はないし、これ以上想いが高まって暴走するのを避けなければならない。


「分かってます。僕もそろそろ限界だったし、時機は任せて下さい」


「父様と母様も喜ぶ。あと暁にちゃんと事情を話しておいてくれ」


「はい」


部屋を出た天満は、暁を捜して気を探った。

すると雛乃も一緒だということがわかり、一瞬足を止めたものの、気配のする庭の花畑へ足を向けた。


「雛ちゃん、暁」


「天ちゃん!」


ぱあっと顔を輝かせた暁と、どぎまぎして顔を赤くさせている雛乃――

無性にいじらしくなり、自身を落ち着かせるために胸を何度か叩いてふたりに歩み寄った。
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