天満つる明けの明星を君に②
ほとんど着の身着のままだったため、荷物を持ち合わせていなかった雛乃のために大量の着替えが届けられた。
それもほとんどが上等な品物でまごまごしていると、庭へ通じる方の障子が陽の光に透けて何者かが部屋の前をうろついているのが見えた。
その小さな影が誰のものかすぐに分かった雛乃は、そっと障子を開けて座って微笑んだ。
「お姫様、どうなさいましたか?」
「えへへ…天ちゃんには部屋に居なさいって言われたんだけど…入ってもいい?」
「ええどうぞ」
「あのね、お菓子持って来たから一緒に食べよ」
饅頭の乗った皿を差し出された雛乃は、暁を招き入れてにこにこしているその可憐な顔をじっと見た。
暁は半妖の朔を父に持ち、生粋の鬼族の芙蓉を母に持ったため、人より鬼の血が濃い。
顔立ちはまだ幼くて可愛らしいが、年頃になるともう少しきつめになるかかもしれないが、それでも誰もが惹かれてやまない美しい娘になるだろう。
はじめて会ったのにはじめての気がしなくて、ふたりにこにこしながら饅頭を食べた。
「雛ちゃん可愛いねってさっき天ちゃんと話してたの。ずっと心配してたんだよ、良かったっ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません…」
ぱちぱちと瞬きした暁は、赤と黒の混ざり合う不思議な色合いの目でじいっと雛乃を見た。
暁もまた雛乃とはじめて会った気がせず、もそりと近付いて膝と膝をくっつけた。
「あのね、お姫様とかじゃなくて暁って呼んでほしいな」
「え…ですが…それは真名ですし…」
「いいの。私がいいんだからいいの。ねっ、呼んでみて」
真名は本人の許可なく呼べばその命を奪われることもある。
だが暁は純粋に願っているように見えて、深呼吸をして暁を見つめて呼んだ。
「暁…様」
「…えへへっ、うん、いいね!わあーっ、いい感じ!」
ごろごろ転がり回って喜ぶ暁がとても可愛らしく、雛乃も嬉しくなって伸ばしてきた小さな手を握った。
離れ難い――
とても、離れ難かった。
それもほとんどが上等な品物でまごまごしていると、庭へ通じる方の障子が陽の光に透けて何者かが部屋の前をうろついているのが見えた。
その小さな影が誰のものかすぐに分かった雛乃は、そっと障子を開けて座って微笑んだ。
「お姫様、どうなさいましたか?」
「えへへ…天ちゃんには部屋に居なさいって言われたんだけど…入ってもいい?」
「ええどうぞ」
「あのね、お菓子持って来たから一緒に食べよ」
饅頭の乗った皿を差し出された雛乃は、暁を招き入れてにこにこしているその可憐な顔をじっと見た。
暁は半妖の朔を父に持ち、生粋の鬼族の芙蓉を母に持ったため、人より鬼の血が濃い。
顔立ちはまだ幼くて可愛らしいが、年頃になるともう少しきつめになるかかもしれないが、それでも誰もが惹かれてやまない美しい娘になるだろう。
はじめて会ったのにはじめての気がしなくて、ふたりにこにこしながら饅頭を食べた。
「雛ちゃん可愛いねってさっき天ちゃんと話してたの。ずっと心配してたんだよ、良かったっ」
「ご心配をおかけして申し訳ございません…」
ぱちぱちと瞬きした暁は、赤と黒の混ざり合う不思議な色合いの目でじいっと雛乃を見た。
暁もまた雛乃とはじめて会った気がせず、もそりと近付いて膝と膝をくっつけた。
「あのね、お姫様とかじゃなくて暁って呼んでほしいな」
「え…ですが…それは真名ですし…」
「いいの。私がいいんだからいいの。ねっ、呼んでみて」
真名は本人の許可なく呼べばその命を奪われることもある。
だが暁は純粋に願っているように見えて、深呼吸をして暁を見つめて呼んだ。
「暁…様」
「…えへへっ、うん、いいね!わあーっ、いい感じ!」
ごろごろ転がり回って喜ぶ暁がとても可愛らしく、雛乃も嬉しくなって伸ばしてきた小さな手を握った。
離れ難い――
とても、離れ難かった。