天満つる明けの明星を君に②
百鬼夜行に連なる百鬼と呼ばれる妖たちは、当然の如く妖の中でも突出した強さを持つ者が多い。
故に容姿に恵まれた者も多く、夕暮れになると広大な庭には彼らが集まり、人見知りの雛乃は美しさの際立つ彼らと目を合わせることができず、ずっとぽんを抱きしめていた。
「じゃあ天満、後を頼む」
「はい。朔兄気を付けて」
屋敷を守る番は本来雪男だけだが、朔と輝夜の妻子、そして暁という守らなければならない存在が増えたことで、天満も加わって番を行っていた。
空を行く朔たちに手を振った後、天満は早速芙蓉と柚葉に取り囲まれて焦っていた。
「な…なんですか?」
「あの可愛い娘さんが雛菊さんの…なのよね!?」
「そう…ですね。そうなんですけど…ちょっと僕もどうすればいいか分からなくて…」
芙蓉と柚葉は顔を見合わせ、揃って自身の胸をどんと叩いて身を乗り出し、天満を仰け反らせた。
「私たちに任せて。話にしか聞いたことがなかったけれど、あの娘さんが雛菊さんなら天満さん、あなた今度こそ幸せにならなくちゃ」
芙蓉の赤く煌めく強い眼差しに苦笑した天満は、暁と共に池の鯉を見ながら談笑している雛乃に目を遣り、軽く胸元をきゅっと握った。
「彼女は…雛ちゃんであって雛ちゃんではないのかもしれない」
「え…?」
「以前の記憶はないみたいだし、そうなれば…彼女にとって僕はあかの他人だし、容姿や性格は似ているかもしれないけど、別人と考えなければならないのかも」
天満の翳りを含んだ美しい横顔に見入ったふたりは、揃って頷き、天満を見上げた。
「それがなんだと言うの?また恋に落ちるかもしれないし、あなたと接することで徐々に記憶が戻るかもしれないでしょう?最初から諦める必要なんてないわよ」
「芙蓉ちゃんの言う通りです。天満さん、ええと…雛菊さんじゃなくて雛乃さんと接する時間を沢山作って下さい。あなたがまた共に在りたいと願うなら」
「…」
視線を感じて縁側を振り返った雛乃と目が合った。
芙蓉たちに励まされた天満は、ゆっくりと歩み寄った。
自身の気持ちを明確にするために。
故に容姿に恵まれた者も多く、夕暮れになると広大な庭には彼らが集まり、人見知りの雛乃は美しさの際立つ彼らと目を合わせることができず、ずっとぽんを抱きしめていた。
「じゃあ天満、後を頼む」
「はい。朔兄気を付けて」
屋敷を守る番は本来雪男だけだが、朔と輝夜の妻子、そして暁という守らなければならない存在が増えたことで、天満も加わって番を行っていた。
空を行く朔たちに手を振った後、天満は早速芙蓉と柚葉に取り囲まれて焦っていた。
「な…なんですか?」
「あの可愛い娘さんが雛菊さんの…なのよね!?」
「そう…ですね。そうなんですけど…ちょっと僕もどうすればいいか分からなくて…」
芙蓉と柚葉は顔を見合わせ、揃って自身の胸をどんと叩いて身を乗り出し、天満を仰け反らせた。
「私たちに任せて。話にしか聞いたことがなかったけれど、あの娘さんが雛菊さんなら天満さん、あなた今度こそ幸せにならなくちゃ」
芙蓉の赤く煌めく強い眼差しに苦笑した天満は、暁と共に池の鯉を見ながら談笑している雛乃に目を遣り、軽く胸元をきゅっと握った。
「彼女は…雛ちゃんであって雛ちゃんではないのかもしれない」
「え…?」
「以前の記憶はないみたいだし、そうなれば…彼女にとって僕はあかの他人だし、容姿や性格は似ているかもしれないけど、別人と考えなければならないのかも」
天満の翳りを含んだ美しい横顔に見入ったふたりは、揃って頷き、天満を見上げた。
「それがなんだと言うの?また恋に落ちるかもしれないし、あなたと接することで徐々に記憶が戻るかもしれないでしょう?最初から諦める必要なんてないわよ」
「芙蓉ちゃんの言う通りです。天満さん、ええと…雛菊さんじゃなくて雛乃さんと接する時間を沢山作って下さい。あなたがまた共に在りたいと願うなら」
「…」
視線を感じて縁側を振り返った雛乃と目が合った。
芙蓉たちに励まされた天満は、ゆっくりと歩み寄った。
自身の気持ちを明確にするために。