天満つる明けの明星を君に②
いつの間に仲良くなったのか――暁が雛乃にべったりくっついていて首を傾げた天満は、姿を見つけて駆け寄ってきた暁の頭を撫でた。


「僕の言いつけを守らなかったんだね?」


「一緒にお饅頭食べただけだよっ。ねえ天ちゃん、雛ちゃんどの位ここに居るの?」


「どうだろう、朔兄が働き口を探してくれてるみたいだしそんなに長くないんじゃないかな」


雛乃は雛菊の生まれ変わり――

働き口が早く見つかってしまえば、せっかく出会えたというのに離れ離れになる。

つまり自分は…こんなに長く待ったというのに、何の進展もなく離れることになり、今までの時を無駄にすることになる。


こんなに会いたかったのに。


「そっかあ…じゃあここに居る間は雛ちゃんとずうっと一緒に居ていいんだよね?」


「雛ちゃん…って呼んでるの?」


「あの…私がそれでいいって言ってしまったので…申し訳ございません」


ふたりの会話を聞いていた雛乃が心底申し訳なさそうに口を挟んでくると、天満は頬をかいてはにかんだ。


「それならいいんです。それで雛乃さん、申し訳ないんだけどあなたのことをもう少し詳しく知りたいんです。いいかな」


「あ、はい…。あまり明るい話ではありませんが…」


天満がにこっと笑うと、雛乃は恥じ入るように俯いて黙り込んでしまった。

かつての雛菊は両親を失い、夫に暴力を振るわれ、とても幸せとは言えない人生だった。

次こそは幸せにしてやりたいと願い続けてきたけれど、こうして出会うまでの間に雛菊――雛乃はまた、苦難の時を過ごしていたのがぽんの話から分かっていたが、どうしても本人から訊きたかった。


いや、雛乃とゆっくり話をしたいだけなのだ。

いくら戸惑っていても、雛乃に忘れられていようとも、魂は惹かれてしまう。


それはもう、どうしようもなかった。
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