天満つる明けの明星を君に②
鬼脚の者に付きまとわれている――雛菊も以前、執拗に男に付きまとわれ、後で分かったことだが父を毒殺され、それを知らず夫婦となり、暴力を振るわれ、虐げられてきた。

そして転生した後もこうして男に付きまとわれる、なんという因果。

小さな声で途切れ途切れに話す雛乃は、暴力を振るわれても自分のせいだと思い込んでいた雛菊と全く同じ話し方だった。


「私があの方を強く拒絶できないから…だから誤解させてしまったのだと思います」


「誤解したとしても、ぽんの家族をどうにかするなんて脅迫をするのはおかしい。本当に君を手に入れたいのなら自分自身の魅力でどうにかしないと」


やや不機嫌そうな口調になってしまったことで雛乃が身を縮めると、天満は息をついて目元を和らげた。


「そういえば暁にすごく懐かれていましたね。あの子が心を開くことは珍しいんですよ」


「え…そう…なんですか?」


「朔兄が…あの子の父が帝王学を教え込んでいますから、付け入られないために他者に簡単に心は開かない。でも会ったばかりなのにあなたに付きまとっていたから驚きました」


嬉しそうに笑った雛乃の笑顔を見て思わず顔をぱっと逸らした天満は、すっと立ち上がって閉めていた障子を開けた。


「じゃあ僕はこれで」


「あ、あの…もう少しその…お話を…」


「…男女ふたり、閉め切った部屋に長く居ると何を言われるか分かりませんよ。誤解されたくないでしょう」


私は別に、と言いかけた雛乃は、反応を待っているかのようにじっと見つめてきた天満の視線に耐えられず俯いた。


――雛乃をこのままここで預かるわけにはいかないだろうか。


例え忘れられていたとしても、それは別に問題ではない。

また共に在ろうとしてくれるのならば――その努力をしなくては。


「…攻めるか」


鬼頭の血が騒いだ。
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