いつも、ずっと。
「お前と生田さんまで巻き込んでしもうて、ごめんな。俺が早う未来に結婚の意思ば伝えれば、その契約も切れるとやろうけど。今任されとる仕事の一段落つかんばなんもしきらん。悪かけど本当余裕のなかっさ」



田代先輩は東京で叔父さんが経営している会社に入社したと思っていたけど、実は叔父さんではなく実の父親だと話してくれた。

長崎に居るのが伯父夫婦で、子供の頃体が弱かった先輩を引き取って面倒みてくれたらしい。

両親と伯父夫婦の間で、高校生までは長崎で過ごし、東京の大学を卒業後に入社すると決められていたそうだ。



「俺、約束通り親の会社に入ったけど、それ以外は指図されとうなかった。自分の人生くらい自分で決めんとな。だけん、東京で結婚相手ば見つけろって見合いば勧めてくる親に反発した」



早く彼女を作りたかったのは、将来のことを見越してのことだったのか。



「見合いについてはよう分からんけど、東京でも出逢いはいくらでもありそうじゃなかですか。長崎で彼女ば作りたかったとには特別な理由でも?」



田代先輩とこんな深い話をするのは初めてかも知れない。

両親の話も初耳だったし。


「両親は俺に東京で身ば固めてほしかとさ。あっちの女と結婚すれば、落ち着くとでも思っとるとやろ。俺が長崎に帰るとば嫌がるけんな。本当は高校から東京に戻ってこいって言われとった。俺が断固拒否したけん、伯父さんが父親ば説得してくれて高校までは長崎におられるごとなったけど。俺は長崎が好きやし、伯父さんと伯母さんにも感謝しとる。出来れば長崎に帰ってきたかけど、今んところは難しかな」



先輩が長崎を離れてから約九年。

もうとっくに都会の色に染まってしまったのかと思っていたけど。



「それで、青柳さんのことはご両親は知っとるとですか?反対されとるんじゃ……」



東京に落ち着いてほしいと思っているのなら、長崎に住んでいる青柳さんとの結婚を認めてくれるとは考えにくい。



「まあな。反対されるやろうってことは、想定済みやった。でも、どんだけ時間がかかろうと説得するつもりやったし。長期戦になるとは覚悟の上やったけど、待たせすぎたかな。でももう本当にあとちょっとやけん。御子柴と生田さんにも迷惑かけて悪かけど、もうちょっと待ってくれんか。今は未来のしたかごとさせときたか。勝手けど」



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