いつも、ずっと。
「あーあ、降ってきやがったな……」



天気予報では今夜降るとは言ってなかった気がするけどな。

一応車に傘は常備してあるからいいけど。

トランクには俺用の傘と、明日美用の傘がある。

そんなことをふと思い出しながら、フレスポの駐車場に入っていった。



百円ショップに向かうべく駐車場内を徐行していたその時。

左斜め前方にあるファミレスの入口付近に、空を見上げて立っている女性の姿を視界に捕らえた。



明日美、もうインフルエンザ治ったんだな。

良かった…………。

約一週間振りに目にするその姿に、荒みかけていた俺の心が癒されるのを感じた。

傘を持っていないようだし、雨宿りでもしているのか。

そんな明日美を放っておける訳もなく、更にスピードを落としつつ近づいていった。



「明日美!傘持っとらんとか?家に帰るとやろ、乗れよ」



助手席側の窓を開け、明日美に向かって声をかける。

いつもだったら弾けるような明るい笑顔を見せてくれるはずだけど、まるで別人のように強ばった表情で俺を見ている。

一瞬、車に乗ることを拒否されてしまうかと思ったけど、意を決したように助手席に乗り込んできた。



「今、出先からの帰りでちょっと買い物に来たっさ。百均に行ってくるけん、ちょっとだけ待っとって」



とりあえず自分の用事を済ませるために、明日美を車に残し百円ショップへと急いだ。

いつもの俺たちだったらどこへ行くのにも一緒。

例えどちらかの用事でも、必ず一緒に行くのが当たり前だった。



『すぐ戻るけん、待っとってもよかぞ』



『いや、着いていく。一人でおってもつまらんし』



こんな感じで、ちょっとした買い物でもついてきてたよな。

距離が離れてしまったのは、俺のせいだ。

あんなガチガチに緊張した明日美を今まで見たことなかった。

一人になって少しは気を緩めてくれてたらいいけど。



「ごめんごめん待たせて。用事は済んだけん、帰ろっか」



さっきに比べたら幾分か緊張も解けたようだけど、まだ俺に笑顔は見せてはくれない。

俺が明日美にどういう態度で接したらいいのか分からないように、明日美もそうなんだろう。



「インフルやったって?大変やったな。もう平気か?」



「う、うん。もう大丈夫。心配かけてごめん……」



俺たちが住んでいるMアパートまで、車で五分もかからない。




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