いつも、ずっと。
道中に会話が弾む訳もなく、あっという間に駐車場に着いてしまった。



さて、これからどうしたものか。

さっき明日美がファミレスにいたのは、きっと青柳さんと会ってきたんだろう。

それだったら、本当は俺なんかに会いたくなかったんじゃないのか。

さっきの警戒心丸出しの様子が物語っていたし。



それでも明日美は俺の車に乗ってきた。

青柳さんから話を聞いただけでは納得できず、俺のことを問い詰めるつもりなのか。



「とっ、友也!まだ時間ある?もしよかったらこのまま車の中で話したいとけど……」



……来たか。

明日美だって勇気を振り絞ってるに違いない。

俺も逃げ出すわけにはいかないようだ。



「……ああ、よかよ。寒うなかか?エンジン切るけど」



明日美が大きく頷いたのを見て、エンジンを止めた。

微かに揺れていた車体がピタッと動きを止め、車内は静けさと張りつめた空気に包まれた。



明日美の緊張がこっちにも伝わってくる。

薄暗い車の中では姿をじっくりとは見れないけれど、固く結ばれた両手が決意のほどを感じせた。

腕が心なしか細くなったような気がするのは、インフルエンザの爪痕か。



「未来と付き合うことにしたって?私たちが偽りの恋人やったこと、バレたみたいやし。これで契約終了…………だね」



聞いてしまったようだな。

もう引き返すことは出来ない。

ごめん明日美、これからしばらくの間はお前を騙すことになる。



「もしかして今日、青柳さんから全部聞いた?じゃあ、俺から話すことなかよな。手間の省けて良かった」



ああ、最低だな。

自分で自分を殴り付けたくなる。

いっそのこと明日美に殴られたい。

そんなことで許されるはずがないけど。



「ねぇ、どうして未来なの?友也は前から未来のことを好きだったの?じゃあなんで未来と田代先輩が付き合うように仕向けたの……。私と付き合うフリなんて、必要だった?なんで……」



「田代先輩と青柳さんのことは、俺がとやかく言えることじゃなかし。付き合うように仕向けたとは俺にとってもその方が都合のよかったけんけど、理由は明日美には言いとうなか」



田代先輩と青柳さんが上手くいってくれないと、俺と明日美の関係にまで影響しかねないからだよ。

田代先輩が明日美にちょっかい出してきたらやっかいだから……なんて。

今この場では言えない。




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