いつも、ずっと。
信じられない、とでも思っているのか。

薄暗い車の中とは言え、明日美の顔を見ることができない。

顔を見てしまったら耐えられそうにないから。

明日美に嘘をついて傷つけてしまうことに。



「ねえ、友也……。友也は私のことをどう思っているの?友也にとって私はどんな存在なの?」



そ、それは……。

なんて答えたらいい?

初めて会ったあの日、俺は明日美に一目惚れした。

約十五年の間、ずっと好きだ。

そしてそれはこれから先も変わることはない。

でもその想いを今ここで明日美に伝える訳にはいかないんだ。



「…………明日美は、昔も今も俺にとって大事な親友ってことに変わりなか。女友達は他にもおるけど、明日美は俺にとっては特別」



そう、親友。

そこから俺たちは始まったんだ。

俺にとっては最初から特別だった。

明日美だけが。



「じゃあ未来は!?友也にとって未来はなんなの?付き合うってことは……。す、好き……なの?」



明日美がバッと勢いよくこっちを向いた気配がして、俺に疑問を投げかけてきた。

青柳さんとはダブルデート以来、言葉を交わしていない。

矛盾を避けるにはどう言うべきか。



「青柳さんは俺のこと、なんて言いよった?」



「未来は友也のこと、優しかし頼りになるって。付き合ううちに好きになる……とか」



青柳さんもさすがに、俺のことをもう好きになってるとまでは言えなかったようだな。

田代先輩とつき合ってて、急に心変わりするなんて無理がありすぎだし。



「ふうん。そっか……。じゃあ俺も似たようなもんかな。青柳さんは明日美ほどじゃなかけど、まあ可愛かかなって思うし。好きになるかどうかは付き合ってみらんばわからんもんな。俺と明日美の契約が他人には秘密やったごと、俺と青柳さんの関係についても他人に話すつもりなかけん」



青柳さんを『まあ可愛か』と言ったのは、あくまで一般論だ。

俺自身は明日美以外の女に興味がない。

好きになるかどうか付き合ってみなければわからないと言ったけど、本当はわかってる。

俺が青柳さんを好きになることはあり得ない。

付き合うとか、実はフリだとか、他人には知らせる必要がない。



「なんね!その秘密ば未来にバラしたとは誰?そがん言われ方ばせんばとなら、契約とか要らんかった!!」



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