いつも、ずっと。
「私は別に……。言いたかことのあっとならここで聞くけど。ていうか瀬名くん、さっき『約束の時間』とか言うたよね。私なんも聞いとらんとけど?」



瀬名はきっと明日美には言わなかったんだろう。



「生田は御子柴に会うつもりなさそうやったし。強引にでも会わせた方がよかような気のして、勝手にこがんことして悪かったけど。あのさ、二人とももうなんも遠慮することなかやろ。思っとることば全部ぶちまければ?」



ここでか?

こんな開放的で、たくさんの人が行き交うこんな場所で、そんな大事な話をするのか。



「明日美、俺は……」



「わ、私っ!…………瀬名くんと付き合うことになったけん!!」



……………………は?



咄嗟に瀬名の方を見たけど、口をポカーンと開けたまま明日美を見ていた。



「おい瀬名!お前、まさか」



「ちょっ、なんで!俺は御子柴には感謝しとるし、まさか裏切るようなことはしとらん」



慌てているようだけど、嘘ついてる訳ではなさそうだ。

瀬名には唯子さんがいるんだし。



「ほらっ見てよ!これが何か分かる?」



紙袋を掲げて見せる明日美。

それは、さっきの……。


「これ、中に何の入っとるか分かる?」



それはさっき二人で選んでいたアクセサリーか。

なんのアクセサリーかまでは知らないけど、多分……。



「指輪、か?」



「…………そうよ。指輪って言ってもただの指輪じゃなかよ。これは、瀬名くんの真剣な想いが込められた贈り物」



瀬名、俺のことを裏切ったりしないとか言いながら、明日美に指輪の贈り物だと?



「ちょっと待てって!御子柴、落ち着けよ。ここはひとつ冷静になって」



「俺、さっきお前ら二人がアクセサリーショップにおるところば見とった。明日美が自分で買いよるとかと思うたけど、瀬名が明日美に手渡すところも見たし。それってやっぱり……」



瀬名から明日美へのプレゼント、なのか。



「友也、見とったと?そうねそんなら詳しく説明する手間の省けてよかった。瀬名くんからの大事な大事な贈り物やけん、大切に持っとくけんね」



……嘘だろ。

そんな、そんなことってあるかよ。

俺のとなりでさっきからワーワーと瀬名がうるさいけど、何を言っているのかちっとも耳に入ってこない。



「明日美……。俺がそう簡単に誤魔化されるとでも思っとる?」





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