目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
やがて、玄関に人影が現れた。
そのシルエットは、あの時と変わらない。

「こんばんは……一色蓮司です」

俺は人影に名乗った。

「一色……蓮司……さん?」

向こうで小さい声がした。
そして、暫く続く沈黙。
もしかして、忘れたのか!?と、少し不安になった。

「あっ!一色さん!はい、今開けますね!」

カチャリと錠をはずす音がしてゆっくりと扉が開いた。
どうやら、忘れてはいないみたいだが、それほど関心もなかったらしいと自惚れていた自分を恥じた。
戸口で微笑む百合は、あの葬儀の時よりも窶れて見えた。
その儚さに、今すぐ抱き締めたくなったが……それでは完全にセクハラ……。
今ここで、通報されるのだけは避けたい、と我慢した。

「突然ごめん。葬儀以来だけど……その後どう?」

「お忙しいなか葬儀にお越し下さり、ありがとうございました。なんとか、元気にやってますよ?あ、どうぞ、散らかってますが……」

百合は中へと俺を促した。

「いや。今日は……様子を見に来ただけだから。それより夕食は食べたの?」

「いえ。まだ……」

瞳を伏せた百合が、嘘をついていることはすぐにわかった。
ショックでお腹が空かないんだろう。
一体いつからこんな状態なのか。
葬儀の日から5日は経っているが、ずっとこんな状態なら、病気になってしまう。
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