目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「違うよ。冗談なんて言わない」

姿勢を正し、両手は拳を作ってテーブルの上に。
握りしめた拳からハッキリと見える血管は、強く握りしめている証拠。
それだけで、どれほど一色さんが真剣なのかがわかった。
でも例え、プロポーズが本気だったとしても、それをすぐに鵜呑みにするほど私だって単純じゃない。

「……でも、とても信じられません。だって、一色さん、彼女と別れたばかりでしょう?付き合ってもない私と……その……結婚だなんてからかってるとしか思えない」

あまりに真剣な彼に対しての、これはささやかな抵抗だ。
プロポーズは真剣でも、想いはそこにないかもしれない。
彼は一人になってしまった可哀想な恩師の娘の面倒が見たいだけ……。
憐れみでプロポーズしたのではないかと勘繰ってしまう。
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