目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
聞いてもいないのに強引に喋り始める女を無視して、受話器を置こうとした。
だけど、聞きたくない内容は、容赦なく耳に届いてしまった。

「蓮司と付き合っていたの」

良く理解出来なかった私は、受話器を取り直し聞き直す。

「……は?今なんて?」

「聞こえなかった?あのね?蓮司と付き合っていたのよ!ちょうどあなたと結婚する直前まで」

「直前………」

……蓮司さんが、そんなことを言っていた気がする。
父の葬儀のあと、うちに来て一緒にご飯を食べに行った。
確かその時……彼女と別れたところだと。
その人だろうか?でも、一体何の用が……。

「そう直前。おかしいでしょう?」

「な、何がですか?」

「ふふ、あなたは突然現れた男にプロポーズされて、おかしいと思わなかったの?」

また嫌ないい方だな、と思った。
最初はおかしい……というかびっくりしたけど、その件は既に解決済みだ。
真摯な蓮司さんの言葉に嘘はない、はず。

「思いません」

「世間知らずなのね」

女はせせら笑った。

「え、それは……」

「蓮司はね、私のことを愛していたのよ。でもね、肉親を亡くしたあなたを放っておけなくて、結婚したの」

言葉が出ない。
言い返したいのに、何か魔術にでもかかったように声が出なかった。
< 247 / 285 >

この作品をシェア

pagetop