目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
三国さんからの連絡は次の日も、また次の日もなかったけど、蓮司さんからは予定より少し早く帰るからと、連絡があった。
その声は少し緊張していて、どうも三国さんが言っていた件と関係があるように思う。
あれから3日。
うちにかかってきた電話のことも忘れかけていた午後、悪意がまたやって来た。

電話の相手が、てっきり蓮司さんだと思い込んだ私は、何の疑いもなく軽やかな声で受話器を取った。

「はーい」

「……お気楽ね」

低く蔑んだような声が耳を侵食し、私は身体を震わせた。

「あっ、あなた……あいしまさん?」

「こんにちは。お気楽なおバカさん」

その言い方に、いちいち腹が立つ。
でも、そうやって挑発するのが、この人の手なんだと思う。
相手がオロオロするのを見るのが楽しい悪趣味な人。
どうして、蓮司さんはこの人とお付き合いを?
ふとその疑問が胸をよぎった。
そして、彼女はひょっとすると、まだ蓮司さんのことが好きなんじゃないかと考えた。
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