目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
その日の夕方。
約束通り、三国さんから電話があった。
三回コールの後、いつものように出ると、大きな声で三国さんが喋った。

「こんばんは奥様。三国です」

電話口の三国さんは珍しく慌てて言った。

「こ、こんばんは。どうしたんです?何かあったんですか?」

「ええ。今、医薬研究部にいるんですけど、少し問題がおきまして……」

三国さんは「少し」と言ったけど、それが大変なことであるのは、口調でわかった。
彼女のように物事に動じない人が、早口になるのにはそれなりの理由がある。
かなり切羽詰まった状況になっているのかもしれない。
それなのに、約束をしたからと言って私に電話をくれるなんて……。
ここは、仕事の邪魔をしないように早く三国さんを解放してあげなければ。

「三国さん、私は大丈夫ですから!電話ありがとうございます。すぐ、蓮司さんに連絡して下さい」

「……はい。奥様、すみません。落ち着いたら、またご連絡致します」

というなり、三国さんは電話を切った。
やはり、よっぽど大変な何かがあったんだ。
何があったかなんて、私には推測すら出来ないけど、どうか無事に解決してくれますように。
その件で、頭が一杯になっていた私は、今日起こった不穏な出来事をすっかり忘れてしまっていた。
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