目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「次は、もっとゆっくり。七ヶ月目くらいがいいんじゃないかな?落ち着いたくらいだろ?」

「……何の話??」

話の意味がさっぱりわからず、また記憶喪失になったのかと思った。
まだ、思い出してないことがあるの!?
私はもう一度蓮司さんを見上げ、もげそうなくらい首傾げた。
すると彼は、あっ!という顔をし、非常に気まずそうに切り出した。

「ごめん。混乱したらいけないと思って言うのを控えていたんだけど……」

「……うん?何を?」

出来たら、衝撃的なことじゃありませんように!と心の中で祈る。
でも、どう考えても、今以上衝撃的なことはないんだけどね……。

「百合。たぶん自分で気づいてない、よな?」

「う、うん?」

「……妊娠してる」

「ふぁっ!?」

違う意味での衝撃に、腰を抜かしそうだった。
でも、いろいろ良く思い出してみると……思い当たる節はあるっ!

「そ、それは本当に?」

「俺も入院中に知ったんだ。階段から落ちて無事だったなんて、奇跡だって医者が……」

「奇跡……」

まさにその通りだ。
でも、頭から落ちた私はひょっとしたら、無意識でお腹を庇ったのかもしれない。
反対に、私を助けてくれたのもこの子かもしれないんだ……。
そっとお腹に手を当ててみると、仄かに暖かい何かを感じた。

「そっか。ふふ。良かった。良かったね無事で」

円を描くようにお腹を擦り、蓮司さんを見上げると、優しく包み込むような瞳がそこにあった。
その瞳が、少しだけ亡き父と重なって私は目を瞬かせた。

「本当に無事で良かった。2人は俺の宝物だからね」

そう言って屈託なく笑い、手を差し伸べる彼と共に、私はこの美しい別荘を後にしたのだ。
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