目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
駅前のワインバーは、ビルの2階にあり、内装は壁が煉瓦作りである。
照明も暗めでとても雰囲気があり、内緒話をするのにはもってこいだ。
彼女に「話がある」と言われてから、だいたいどんな内容なのかはわかっていた。
それは、きっと恋愛絡みのことなんだろう。
学生時代も、女に困ったことは全くない。
いつも誰かが側にいて、いなくなったらまた誰か。
まぁ、向こうが飽きるまでというのが正しいかもしれない。
俺の恋愛なんて、薄っぺらくて、愛なんてどこにもなかった。
それよりも八神ゼミで活動する方が千倍楽しかったし、教授の家でうまい飯が食いたいと思っていた。

「で、話って?」

一頻り取り留めもない話をしたあと、俺は本題を切り出した。
彼女は落ち着いてワインを一口飲み、飲み口のルージュを軽く拭いてこちらを向いた。

「あの……私、ここ最近仕事をしてて思ったの」

「うん」

「あなたの仕事の仕方は、とても効率的で無駄がない」

「うん」

「私、そういうの好きなの。無駄なことが大嫌い。だから、パートナーにもそれを求めてしまうの」

「……うん」

きっと俺達は考え方が似ていた。
だから彼女がどういうことを言いたいのかが手に取る様にわかった。
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