目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。

「どこだ？」

「ほら、右側……今、立ち上がって挨拶してる……」

二宮の指先を追うと、そこには喪服に身を包んだ小柄な女性がいた。
俺の視線は彼女に釘付けになった。
少し長くなった髪を下の方で一つに纏めているせいか、華奢な首筋が露になっている。
彼女はこんなに細かっただろうか？
喪服のせいか？……そう思ったがすぐに否定する。
喪服のせいだと？バカな、そんなこと教授の死で哀しんでいるからに決まっているじゃないか！
自分の考えの浅さに呆れ、そして苛立った。
この場の誰よりも、うちひしがれ、悲しみ、泣き叫びたいのは百合なんだ。
だが、喪主となればそうもいかない。
彼女は参列者に挨拶される度、笑顔を作り「本日はどうもお越し下さりありがとうございます」と繰り返す。
その頑張る姿に……必死で笑顔を作る姿に。
俺の心は囚われた。
何故だが漠然と胸の中に、押し寄せる想い。
それが確固たる決意となっていくのには、そんなに時間はかからなかった。