目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「三国さんは信頼出来る人だ。何人もの女性社員からの相談を受けて、俺に報告してくれた。証拠もある」

と、上着のポケットからボイスレコーダーを取り出し机に置いた。

「この中に、君が女性社員を罵る言葉や、脅すような言葉が録音されている」

「……そんな……そんなはずないわ。だってそんなことしてないもの!」

「じゃあ、ここで最大音量で流すがいいか?」

途端に笙子の顔が蒼白になった。
俺は中身を確かめていないが、彼女の表情だけで、三国さんの言ったことが真実だと悟った。
どんな酷いことを言われたのか。
ターゲットになった女性社員の気持ちを考えると自分と笙子に怒りが込み上げた。
自分が笙子と変な約束をしなければ、誰も傷付かずに済んだのに。

「……もう十分だろ。俺達の約束は白紙だ」

「……バカにしないで!こんな惨めな結末、私、明日からどんな顔して会社に行けばいいの!?」

「その件だが、君は明日から秘書課から第三事務所の物流課に異動になる」

「は……なんですって?」

蒼白から真っ赤に、笙子の顔色は変化した。
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