目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「物流課に異動だ」

もう一度強く言った。
社内の雰囲気を乱し、傷害に近い事件を引き起こした以上、本社にいさせるわけにはいかない。
それは、三国さんとの約束でもある。

「そんな横暴が罷り通るとでも?訴えるわよ?」

「訴えられるのは、君じゃないのか?三国さんの旦那さんは弁護士だよ?既に証拠を揃えて訴訟の準備をしているそうだ」

俺はささやかな嘘を付いた。
三国さんの夫が弁護士なのは本当だが、訴訟の準備をしているとは聞いてない。
だが、状況に因っては、そうする可能性は非常に高いのだ。

「…………」

笙子は俺を睨み付けたまま、暫く動かなかった。
今胸中にどんな思いが渦巻いているのかは、知らないが呪いを掛けられるくらいに恨まれているのはわかる。
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