綴る本
透き通るような紺碧の髪色の青年は城門前まで来ていた。アーチ状の城門には二人の銀色の鎧を身につけている兵士が、壁にもたれかかるようにして話し込んでいる。緊急時にこんな態度でまともな動きがこの兵士にできるのか疑わしいくらいだ。この様子を見ていると本当に戦争を仕掛けようとしている国なのかと、再度疑問に思ってしまう。
青年はまだ喋っている二人の兵士に話し掛けた。
「ここで兵士の志願を受けられると聞き来た」
二人の兵士が慌てて青年に向き直るなり一瞬動きを止めたかと思うと、ちょっと待っててくれと、一人兵士が言い残し走っていく。 残された兵士がおずおずと問い掛けた。
「あんた、男なのか女のかどっちなんだ?」
余りにもくだらない質問に青年は答える気が失せた。しかし、兵士の志願に必要だと思われることにだけ答える。
「俺の名前はユラだ」
「そ、そうか」
青年――ユラの物言いに気圧されたように兵士が一歩後ろに下がった。
暫くの間、重たい沈黙が続いていると走っていった一人の兵士が短く無造作に刈り剃られた黒髪に程よく焼けた肌の男性を伴ってこちらまで来た。
「だ、ヘンズ大隊長!」
驚いたように声を出し、城門で待っていた兵が慌てて背筋を伸ばし敬礼をする。服の上からでも分かる筋肉質のヘンズ大隊長と呼ばれた男性は、軽く手を振る。直ぐ様、兵士が敬礼を解いた。
兵士からユラに視線を移したヘンズが鋭い瞳を向けた。
「君が兵士志願者だな? ついてきてくれ」
簡潔にそれだけをヘンズが伝えると、踵を返し背を向けて歩き出した。
ユラはその態度を気にせず黙ってついていく。
王城の正面の扉から横に反れて歩き、目の前の白い外壁で統一された大きめの軍施設に入る前にヘンズが立ち止まった。背を向けたまま、ユラに説明する。
「今から訓練所の一つで実力を確かめるためテストをする。テストと言っても模擬戦闘だ。だが、訓練用の斬れない刄でするわけじゃない。お前の腰に挿している剣を使ってしてもらう。多少の怪我をするかもしれんが、死にはしない」
そしてまたヘンズが歩き出した。たんたんと淡白に言いたいことだけを言う。その後ろ姿からは質問は一切受け付けん、とでもいってるかのような様子であった。
青年はまだ喋っている二人の兵士に話し掛けた。
「ここで兵士の志願を受けられると聞き来た」
二人の兵士が慌てて青年に向き直るなり一瞬動きを止めたかと思うと、ちょっと待っててくれと、一人兵士が言い残し走っていく。 残された兵士がおずおずと問い掛けた。
「あんた、男なのか女のかどっちなんだ?」
余りにもくだらない質問に青年は答える気が失せた。しかし、兵士の志願に必要だと思われることにだけ答える。
「俺の名前はユラだ」
「そ、そうか」
青年――ユラの物言いに気圧されたように兵士が一歩後ろに下がった。
暫くの間、重たい沈黙が続いていると走っていった一人の兵士が短く無造作に刈り剃られた黒髪に程よく焼けた肌の男性を伴ってこちらまで来た。
「だ、ヘンズ大隊長!」
驚いたように声を出し、城門で待っていた兵が慌てて背筋を伸ばし敬礼をする。服の上からでも分かる筋肉質のヘンズ大隊長と呼ばれた男性は、軽く手を振る。直ぐ様、兵士が敬礼を解いた。
兵士からユラに視線を移したヘンズが鋭い瞳を向けた。
「君が兵士志願者だな? ついてきてくれ」
簡潔にそれだけをヘンズが伝えると、踵を返し背を向けて歩き出した。
ユラはその態度を気にせず黙ってついていく。
王城の正面の扉から横に反れて歩き、目の前の白い外壁で統一された大きめの軍施設に入る前にヘンズが立ち止まった。背を向けたまま、ユラに説明する。
「今から訓練所の一つで実力を確かめるためテストをする。テストと言っても模擬戦闘だ。だが、訓練用の斬れない刄でするわけじゃない。お前の腰に挿している剣を使ってしてもらう。多少の怪我をするかもしれんが、死にはしない」
そしてまたヘンズが歩き出した。たんたんと淡白に言いたいことだけを言う。その後ろ姿からは質問は一切受け付けん、とでもいってるかのような様子であった。