綴る本
「面倒です。ですからヘンズかアクールがしてください。か弱い少女にまた戦え等、上司としてあるまじき発言です」
「俺は嫌だからな」とアクール。
「上司の命令は聞くものだ」とヘンズ。
この二人もルージュと同じく面倒だからしようとしない。
諦観して話に加わろうとしなかった水色の髪を頭の上で括っている女性がルージュに哀れみの視線を送くった。
「あんたも大変ね、ルージュ。低落な男が同じ部隊にいると」
「わかりますか、ユマリス。使えない男がいると苦労という意味を真に理解できます」
傍らにいる男二人に蔑むような目を女二人が向けた。そしてすぐに仕方がない、といった風に溜め息を吐いたルージュはユラが待っている場所まで行った。相対するような形で二人は対峙する。
離れた場所から興味なそうな声でヘンズが始まりの合図を告げた。
「始め」
静かな訓練所にヘンズの低い声が響く。
合図と同時にルージュは腰に挿していた使い込まれている刃渡り三十センチの先端が鋭利に尖り、刃の部分が綺麗に磨かれているそれを取り出した。形状は突きに特化のスティレットに似ている。小回りが効き殺傷能力が高そうに見えるが、刀身が騎士の用いる普通の片手剣――ショートソードよりも短く、リーチがないというのが欠点だといえる。
ルージュは短剣に近い獲物を器用に回転させて逆手に持ちかえた。その動作は外見とは裏腹に、相当戦い慣れているのが窺い知ることが出来る。腰を落として態勢を低く保ち、相手からいつ仕掛けられても対応出来るようにしていた。
ユラは自然体に立ったまま構えようとしないで、無表情でただ相手を見ている。その様子にルージュが顔をしかめた。
剣を取り出していない相手に斬り付けていいものか、ルージュは眉を寄せて悩んでいた。対峙する綺麗な容貌の相手がポケットに手を入れて、何の感情も表さない顔のまま剣を取り出す気配が微塵も感じられない。
暫く均衡状況が続き、痺れを切らしたルージュが口を開いた。
「剣を抜いてください」
「抜く必要がない。それだけの実力差がある」
「それは……私が弱い、との意味として言っているのですか? それとも、女に剣を向けることができない情けないフェミニスト、だからですか?」
節々に剣呑な響きに皮肉ん含んだ冷たい言葉だった。
「俺は嫌だからな」とアクール。
「上司の命令は聞くものだ」とヘンズ。
この二人もルージュと同じく面倒だからしようとしない。
諦観して話に加わろうとしなかった水色の髪を頭の上で括っている女性がルージュに哀れみの視線を送くった。
「あんたも大変ね、ルージュ。低落な男が同じ部隊にいると」
「わかりますか、ユマリス。使えない男がいると苦労という意味を真に理解できます」
傍らにいる男二人に蔑むような目を女二人が向けた。そしてすぐに仕方がない、といった風に溜め息を吐いたルージュはユラが待っている場所まで行った。相対するような形で二人は対峙する。
離れた場所から興味なそうな声でヘンズが始まりの合図を告げた。
「始め」
静かな訓練所にヘンズの低い声が響く。
合図と同時にルージュは腰に挿していた使い込まれている刃渡り三十センチの先端が鋭利に尖り、刃の部分が綺麗に磨かれているそれを取り出した。形状は突きに特化のスティレットに似ている。小回りが効き殺傷能力が高そうに見えるが、刀身が騎士の用いる普通の片手剣――ショートソードよりも短く、リーチがないというのが欠点だといえる。
ルージュは短剣に近い獲物を器用に回転させて逆手に持ちかえた。その動作は外見とは裏腹に、相当戦い慣れているのが窺い知ることが出来る。腰を落として態勢を低く保ち、相手からいつ仕掛けられても対応出来るようにしていた。
ユラは自然体に立ったまま構えようとしないで、無表情でただ相手を見ている。その様子にルージュが顔をしかめた。
剣を取り出していない相手に斬り付けていいものか、ルージュは眉を寄せて悩んでいた。対峙する綺麗な容貌の相手がポケットに手を入れて、何の感情も表さない顔のまま剣を取り出す気配が微塵も感じられない。
暫く均衡状況が続き、痺れを切らしたルージュが口を開いた。
「剣を抜いてください」
「抜く必要がない。それだけの実力差がある」
「それは……私が弱い、との意味として言っているのですか? それとも、女に剣を向けることができない情けないフェミニスト、だからですか?」
節々に剣呑な響きに皮肉ん含んだ冷たい言葉だった。