身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~

「悪い……」
礼華に出会ってから、あれほど社長にならなければと思っていたことなど、嘘のようになくなっていた。
もちろん、あの契約を決めて文句を言われることなく、社長に就任し礼華と結婚したいそう思っていた。

もしも礼華がそれを望むなら。

礼華が社長夫人は荷が重い。そんなことを言ったなら弟の真翔に社長の座を譲り、俺は真翔を支えてもいい。
それぐらいの覚悟はできていた。

それほど礼華が大切だ。

高坂の言葉に改めて自分の中の礼華の大切さに気づいた。

そんな時、クスリと笑い声が聞こえて慌てて高坂をみた。
「別にいいよ。専務だろうが、社長だろうが俺はお前についてきただけだから」
硬派で冷たくめったに笑うことのない高坂の笑顔。
「高坂……」

「むしろ俺はお前がそれだけ大切な人を見つけれて良かったと思ってるよ。昔からどこか女とは一線をひいてしか付き合ってこなかっただろ?」

「ああ」
確かに俺は、顔やステイタスだけに寄って来る女に本気になることも、結婚する気もまったくなかった。

「お前をそんなに変えたその子はすごいな。すぐに探させる。でも、更科さんのことをまずなんとかしろよ」
それだけを言うと高坂は部屋を出ていった。

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