身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
「なんでしょう。専務」
「ちょっと部屋に来てもらえるかな」
努めて冷静に言ったつもりだったが、余裕を見せる薫子に内心苛立ちが募る。
「こちらではできない話ですか?」
真っ赤な唇が弧を描くのを見て、俺は心の中で大きなため息を付いた。
やわらかな礼華の笑顔が見たい。
「ああ、持田さん?」
そんな時ふと聞こえたその声に、俺は反射的にその方を見た。
「そうなの、礼華まだ調子が悪いみたいで」
俺と薫子の会話よりも、自らのスマホを見ていたその秘書に俺は気づいた。
礼華って言った?
心配そうな表情でその秘書は言うと小さくため息を付く。
「君……」
無意識に薫子よりもその彼女に声を掛けていた。
「真鍋君!専務申し訳ありません」
俺がいるのにスマホを見ていたことをとがめられたと思ったのだろう。
室長が代わりに謝罪をする。真鍋さんと呼ばれたその彼女もすぐに頭を下げた。
「嫌、違うんだ。今……」
「ちょっと!」
何かを感じたのか、薫子が声を上げた。