愛され秘書の結婚事情
「何だか話が妙な方向に流れているな」と思いつつ、悠臣は真面目な顔で「うん。それで?」と続きを促した。
「まず、家事能力です。一応一通りの家事はこなせますが、料理の腕はまだまだ未熟ですので、出来ればプロに習える料理教室に通い、栄養学の勉強も始めたいと思います」
「うん……」
「それから、美容とファッションについても研究するつもりです。この点に関して私は、世間一般の女性に比べて知識もセンスも格段に劣っておりますので、こちらも出来れば良い講師を見つけ、指導を仰ぎたいと思っております」
「ああ、それは僕も賛成だな」
悠臣はニコニコしながら頷いた。
「佐々田さんは素材はとても良いものを持っているのに、全くそれを生かしたファッションや髪型をしようとしないから、もったいないなと常日頃思っていたんだよ。いや、いつもきらびやかにしている必要はないよ。君がとっても美人なことがバレたら、僕のライバルが増えちゃうからね。だけどやっぱり、好きな子のフェミニンな格好は見たいんだよね。これって男の究極のエゴだけどね」
一息に捲し立てた悠臣を、七緒はポカンとした顔で見つめ、その後でプッと噴き出した。
「私が美人だなんて仰るのは、桐矢さんくらいのものです」
「言ってなさい。そのうち僕の方が正しかったってわかるよ」
悠臣はしたり顔で言い返し、「それから?」と言った。
七緒はまた表情を引き締め、「まだ沢山あります」と言った。