愛され秘書の結婚事情
思わず悠臣が息を飲むような、そんな優しく美しい笑顔で、七緒は言った。
「わかりました。そう言っていただけると、私もとても嬉しいです。桐矢さんのお気持ちが、とても嬉しいです」
「……うん」
悠臣もホッとしたように表情を緩めた。
そして彼は手を繋いだまま、悪戯っぽい笑みを浮かべ彼女を見た。
「今は座っているから、またキスしても大丈夫だよね?」
「えっ……」
「それとも、僕とのキスは良くなかった? 不快だった?」
七緒は赤い顔で彼を睨み、「そんなこと……聞かないとわかりませんか」と言った。
「わかるけど、聞きたい。僕はね、自分に自信がないんだ。だからいつも、あなたに承認を貰いたい。僕の我儘だけど、僕を安心させるために、言葉にして伝えて欲しい」
「…………」
七緒は赤い顔のまま顔をしかめたが、好きな男の乞うような眼差しには抗えず、渋々口を開いた。
「すごく、良かったです。これまで経験したキスは何だったんだっていうくらい、気持ち良かったです……」
途端に悠臣はパッと顔を輝かせ、「やった」と無邪気に笑った。